国家公務員総合職(化学・生物・薬学)R3年 問36解説

 問 題     

リチウムイオン二次電池に関する記述 ㋐ ~ ㋓ のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。

㋐ リチウムは、同じ小型二次電池の材料であるニッケルやカドミウムと比べると標準電極電位の絶対値は小さい。しかし、リチウムイオン二次電池は、現在量産されている他の二次電池より重量エネルギー密度は高い。

㋑ リチウムイオン二次電池は、高電圧でも分解されない有機溶媒と電解質を用いることで、3 V を超える起電力を実現している。

㋒ リチウムイオン二次電池用のセパレータには、正負極電極間の電子的接触を防止し、高いイオン通過性、機械的強度及び化学的安定性を有するポリオレフィン製の微多孔膜が主に用いられている。

㋓ 二次電池には浅い充放電を繰り返すと使用中に急激に電圧が低下し、電池容量がみかけ上減少するメモリー効果という現象があり、リチウムイオン二次電池もニッケル水素電池と同程度のメモリー効果が発生する。


1.㋐、㋑
2.㋐、㋒
3.㋑、㋒
4.㋑、㋓
5.㋒、㋓

 

 

 

 

 

正解.3

 解 説     

㋐ ですが
イオン化傾向が、金属の「標準電極電位」の値を、H を 0 として並べたものです。Li は イオン化傾向が Ni や Cd に比べはるかに小さく、H から見れば離れています。そのため、標準電極電位の絶対値は大きくなります。「リチウムは… 標準電極電位の絶対値は小さい」わけではありません。㋐ は誤りです。

㋑ は妥当です。
約 3.7 ~ 3.9 V の起電力を実現しています。

㋒ は妥当です。
セパレーターに関する記述です。

㋓ ですが
前半部分について、メモリー効果についての記述は妥当です。後半部分について、メモリー効果は、ニッケルカドミウム蓄電池で大きく見られ、相対的にニッケル水素蓄電池では影響が小さいです。そして、リチウムイオン二次電池では影響がほぼないです。ちなみに、鉛蓄電池では影響がありません。「リチウムイオン二次電池もニッケル水素電池と同程度のメモリー効果」は、妥当ではないと考えられます。㋓ は誤りです。


以上より、正解は 3 です。

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