国家公務員総合職(化学・生物・薬学)R2年 問25解説

 問 題     

分子振動に関する次の記述の ㋐、㋑、㋒ に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。

「水素 H2、ヨウ素 I2、ヨウ化水素 HI の混合気体について、赤外吸収スペクトルを測定したところ、2300 cm-1 の位置に吸収が観測された。また、波長 500 nm の光を用いて振動ラマンスペクトルを測定したところ、505 nm、565 nm、640 nm に強いストークス光が観測された。

これらのことから、分子振動の振動数について、H2 はおよそ ㋐ Hz、I2 はおよそ ㋑ Hz、HI はおよそ ㋒ Hz であることが分かる。ただし、吸収や散乱に関与する物質は、H2、I2、HI のいずれかであるとし、真空中の光速を 3.0 × 108 m・s-1 とする。」

 

 

 

 

 

正解.4

 解 説     

二原子分子の振動数について問われています。

赤外吸収スペクトル測定法では、分子を構成する原子核間の「振動」状態の変化に伴い光を吸収する現象を利用しています。「双極子モーメント」の変化を伴う振動変化を検出します。いいかえると、双極子モーメントが変化しないような振動については検出できません。従って、「N2」 のような等核二原子分子の振動などは吸収されません。これは基礎知識です。

等核二原子分子の振動では吸収が見られないのだから、本問で吸収が見られた「2300 cm-1」の吸収は HI 由来です。


波の基本式 v = fλ より、f = v/λ です。まず、波数から λ を出します。1 cm = 10-2 m です。
1 波が 1/2300 × 10-2 m なので
λ = 1/2.3 × 10-3 × 10-2
= 1/2.3 × 10-5 m とわかります。

v = 3.0 × 108 を代入して
f = 3.0 × 108/(1/2.3 × 10-5)
= 6.9 × 1013 です。これは HI の振動数となります。正解は 1 or 4 です。


後は H2 が、換算質量小さいので、振動数は大きいだろうという判断でよいのではないでしょうか。㋐ の方が大きくなっている選択肢を選べば、㋐ は 1.3 × 1014 です。


以上より、正解は 4 です。

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