国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H27年 問69解説

 問 題     

我が国における農薬の発達史に関する次の記述の㋐~㋓に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。

「㋐ は、合成ピレスロイドと同じ作用機構の有効成分を含んでおり、我が国で ㋐ が殺虫剤として初めて用いられたのは 1891 年である。また 1897 年にはブドウのべと病防除に、硫酸銅と石灰の混合水溶液である ㋑ が導入された。このように初期の農薬は天然物と無機化合物が主体であった。

1938年に発見された有機塩素系殺虫剤の ㋒ は BHC とともに、戦後多く使われるようになったが、残留毒性の問題からいずれも 1970 年前後に使用禁止となった。1944 年に発見された有機リン剤の ㋓ は 1951 年頃から導入されたが、哺乳動物等に対して猛毒であるため 1969 年に製造が中止され、より低毒性の有機リン剤に切り替えられていった。」

 

 

 

 

 

正解.1

 解 説     

㋐ ですが
もともと除虫菊の花の殺虫成分であるピレトリンを化学的に安定化し、残効、効力を増したものを総称して、合成ピレスロイドといいます。作用機序は、神経軸索の膜表面にあるナトリウムイオンチャネルに速やかに作用し、チャネルを開放状態にすることで、正常な神経伝達を阻害するという機序です。従って、㋐ は除虫菊粉です。

ちなみに、デリス根は、かつてよく用いられていた植物性殺虫剤の一つです。ロテノンを含みます。

㋑ ですが
硫酸銅と石灰の混合水溶液は、ボルドー液です。ちなみに、石灰硫黄合剤は、多硫化カルシウム(CaSx)が主成分の、農薬の一種です。

㋒ ですが
有機塩素系殺虫剤、残留毒性、使用禁止とくれば DDT です。ちなみに、PCP は、ペンタクロロフェノールです。かつて除草剤として使用し、水質汚染等が問題で、農薬登録失効した化合物です。

㋓ ですが
有機リン系、製造中止に伴いより低毒性の有機リン系へ、とくればパラチオンです。フェニトロチオンは今も用いられている、有機リン、有機硫黄系殺虫剤の一種です。

以上より、正解は 1 です。

コメント