国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H27年 問10解説

 問 題     

アカパンカビの野生株は最少培地*で生育する。野生株の細胞内では、原料となる物質からいくつかの中間生成物(アミノ酸A ~ C)を経てアルギニンが合成される。アミノ酸 A ~ C は,一連の反応によって生成され、各反応はそれぞれ決まった酵素の触媒作用により進行する。

X 線をアカパンカビの野生株に照射したところ、最少培地にアルギニンを添加しなければ生育できない突然変異株(栄養要求株①~④)が生じた。このような栄養要求株 ① ~ ④ 及び野生株を最少培地又は最少培地にアミノ酸 A ~ C のいずれかを加えた培地で培養したところ表のようになった。

栄養要求株 ① ~ ④ に関する記述 ㋐ ~ ㋓ のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

㋐ 栄養要求株①は、A からB への反応を触媒する酵素の遺伝子に変異が起きている。
㋑ 栄養要求株②は、C からA への反応を触媒する酵素の遺伝子に変異が起きている。
㋒ 栄養要求株③は、B からC への反応を触媒する酵素の遺伝子に変異が起きている。
㋓ 栄養要求株④は、B からアルギニンへの反応を触媒する酵素の遺伝子に変異が起きている。

1. ㋐ ㋑
2. ㋐ ㋓
3. ㋑
4. ㋒ ㋓
5. ㋒

 

 

 

 

 

正解.1

 解 説     

最少培地に原料が含まれており、野生株は原料を、原料→?→?→?→アルギニン と合成するということです。そして、一つ一つの反応に対して酵素があり、どこかの酵素が失活しているのが突然変異株です。原則としてこのタイプの問題は「+」が少ない株から注目するとわかりやすいです。

本問では、栄養要求株 ③ から注目します。この株は A ~ C どれを加えても育っていないため、?→アルギニンを担う酵素が失活しているとわかります。

次に、栄養要求株 ① の「+」が少ないので注目します。B をあげると生存する、ということは B がアルギニンに一番近い側の中間生成物ということです。原料→?→?→B→アルギニン という流れだとわかります。するとこの株は、 ? → B の反応を担う酵素が失活しているとわかります。

後は同様に、② に注目すれば、原料→?→A→B→アルギニン とわかります。この株は ? → A の反応を担う酵素が失活しています。また、残っている一番原料側の中間生成物は C です。原料 → C が失活しているのが、株 ④ です。

従って、妥当な記述は ㋐、㋑ です。

㋒ ですが、③ は、B → アルギニン反応を触媒する酵素の遺伝子が変異です。また、㋓ですが、④は、原料 → C が失活です。

以上より、正解は 1 です。

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