身の回りのものを大雑把に化学的に2分すると酸と塩基に分かれます。分け方によって何が酸で何が塩基かというのが変わってくるため、酸・塩基について考える時はどのような定義に基づくかが重要です。
どうわけるにせよ、一般的に酸の持つ性質としては、リトマス紙を赤に変える、酸っぱいなどがあげられます。代表例は HCl です。塩酸です。一般的に塩基の持つ性質としては、リトマス紙を青に変える、苦いなどがあげられます。代表例は NaOH です。水酸化ナトリウムです。
代表的な酸の定義として、水中で H+ を放出する物質が酸、水中で OH– を放出する物質が塩基 という定義があります。これはアレニウスの定義と呼ばれます。
ある H を含む物質である HX が水中で H+ + X– に 100% 分かれたとします。これを電離度 1 である と表します。電離度が 1 に近い場合、その物質を強い酸と呼びます。同様に、ある OH を含む物質である XOH が水中で X+ + OH– に 100% 分かれた場合、やはり電離度1です。その物質は強い塩基です。電離度は 0.01 のように小さい物質は弱い酸、弱い塩基と呼びます。
化合物の中には、H を 2 つや 3 つ含み、水の中で段階的に電離するものもあります。例として、硫酸 H2SO4 をあげます。H2SO4 は、まず H+ + HSO4– にわかれます。そしてHSO4– は H+ + SO42- にわかれます。このように一つの化合物から複数個の H+ や OH- が電離する場合、「多価の酸、多価の塩基」と呼びます。強い、弱いとは独立した指標である点に注意が必要です。多価で強い酸もあれば、多価で弱い酸もありえるということです。化合物によって異なります。
※この節の前半では『溶かす物』に注目して、それが酸か塩基か、及びその強さについての説明だったことに留意してください。以降の話は、すでに強い酸なり弱い酸なりが溶けた『水溶液』について考えます。
水中における H+ の量に注目することで、その水溶液が酸性か塩基性かを表すことができます。使われる指標が pH です。小文字の p は 「-log10」を略したものです。pH = -log10[H+] です。[ ] でかこっているのは 『単位が mol/L であり、モル濃度です』ということを表します。
一定温度における水中において [H+] と [OH–] を掛けた値が定数になることが知られています。これを水のイオン積といいます。Kw で表します。Kw = [H+][OH–] ≒ 1.0 × 10-14 です。丁度 [H+] = [OH–] となる時 、H+ = 1.0 × 10-7 で、pH = 7 です。pH = 7 を中性と呼びます。これよりも pH が小さい場合が酸性、大きい場合が塩基性です。
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