上気道炎(かぜ症候群)とは
主にウイルスによりひきおこされる鼻、咽頭などの上気道粘膜の急性炎症性疾患の総称です。症状としては、鼻水、くしゃみ、のどの痛み、発熱等があげられます。治療は対症療法が行われます。
インフルエンザとは
インフルエンザウイルスによる感染症で主に冬から春先に流行します。かぜ症候群と比較して急速に発症し、高熱や倦怠感などの症状が見られます。
インフルエンザウイルスは、大きくA型、B型、C型に分類されます。A 型は特に変異型が多く世界的な大流行を起こしやすいウイルスです。ヒトにも、動物にも感染します。B 型は、A 型に比べると流行の規模が小さいウイルスです。ヒトだけに感染します。C 型は、季節によらず4歳以下の小児に感染します。
治療には、アマンタジンやノイラミニダーゼ阻害剤等が用いられます。
慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)とは
肺気腫及び慢性気管支炎の総称です。
肺気腫とは
肺胞の壁が壊れる疾患のことです。肺胞が壊れると十分な酸素が取り込めなくなり息切れなどの症状が起きます。大きな原因の1つが喫煙です。この病気に完治はなく、残った肺機能を残存させることが治療となります。対症療法として、気管支ぜん息とほぼ同じ薬が用いられます。
慢性気管支炎とは
慢性的な炎症により、気管支の分泌物が過剰となり、咳やたんが長期間(2年以上、少なくとも冬に3ヶ月以上)持続するような状態のことです。痰が貯留するため、感染がおこりやすくなるといった特徴があります。大きな原因として、喫煙があげられます。対症療法として、去痰薬、気管支拡張薬、抗菌薬などが用いられます。
肺炎とは
肺の炎症性疾患の総称です。病変の形態による分類として、肺胞性肺炎と、間質性肺炎があります。この区別は、実際にはレントゲン所見により判断されます。
肺胞性肺炎は、さらに原因により細菌性と非細菌性に大きく分類されます。また、感染場所により、市中肺炎及び院内感染と分類されることもあります。肺胞性肺炎の原因は、市中肺炎では主に肺炎球菌やインフルエンザ菌(注!インフルエンザウイルスとは別ものです)などがあげられます。一方、院内感染では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA:Methicillin-Resistant Staphylococcus Aureus)や緑膿菌などが主な原因です。
又、レジオネラ菌による肺炎は、特に在郷軍人病とよばれます。水が貯まっている所に繁殖したレジオネラ菌が原因となることが特徴であり、しばしば集団感染をひきおこします。
MRSA に対しては、バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリドなどが治療薬として用いられます。緑膿菌に対しては、ピペラシリン、アミノグリコシド系、ニューキノロン系抗菌薬が用いられます。レジオネラ菌に対しては、マクロライド系、ニューキノロン系抗菌薬が用いられます。
他にもクラミジアが原因となることもあります。クラミジアは鳥類(インコやオウム)などの排泄物を介して人体に感染します。クラミジアには細胞壁が存在しないためセフェム系などのβ-ラクタム系の抗菌薬が無効であることに注意が必要です。
さらに、肺炎の原因としてはウイルスもあげられます。代表例としてサイトメガロウイルスがあります。サイトメガロウイルスは、ヒトヘルペスウイルスの一種であり5型に分類されます。治療薬としては、抗ウイルス薬であるガンシクロビル、ホスカルネットなどが用いられます。
又、真菌による肺炎もあります。代表的な肺炎を引き起こす真菌は、アスペルギルス、カンジダです。治療薬には抗真菌薬である、アムホテリシンB(ポリエン系)、イトラコナゾールやフルコナゾール(共にアゾール系)、ミカファンギン(キャンディン系)などが用いられます。
肺結核とは
主に結核菌により引き起こされる感染症のことです。特徴は感染者の大部分が、症状が出ないことです。すなわち、無症候性、潜伏感染です。又、患者のうち、高齢者の占める割合が高いという点も特徴です。
ツベルクリン反応により、過去に結核菌に感染したことがあるかどうかを検査します。又、BCG(Bacille de Calmette et Guérin)という、結核菌の弱毒株から調製した生ワクチンが予防接種としておこなわれます。
(余談ですが、BCG注射はハンコ注射として思い出に残っている人が多いかもしれません。このハンコ注射は、管針法と呼ばれ、単純な皮内注射に比べて炎症がひどくなりにくい等の長所があるそうです。又、ハンコ注射を行なっている国は日本のみのようです。)
結核の治療は、耐性菌の出現を防止するため強力な化学療法を、短期間に集中して行います。近年では DOTS (Directly Observed Therapy Short-couse)と呼ばれる治療法の有用性が評価されています。
治療薬として代表的なものとしては、イソニアジド、リファンピシン、エタンブトールなどがあげられます。
肺癌とは
肺に発生する上皮細胞由来の悪性腫瘍です。主に気管支由来です。日本人男性において全がん死の中で最も多いがんです。女性においては3番めに多いがんです。(2012時点)
肺がんは、細胞標本をとった時の見た目により大きく非小細胞肺がん(約80%。さらに細かく分類される。)と小細胞がん(約20%。化学療法や放射線療法の感受性が高い)に分類されます。
小細胞癌の治療薬には、白金製剤を中心とした多剤併用療法が行われます。白金製剤により放射線療法の作用が高まることが理由です。白金製剤の代表例はシスプラチンです。
シスプラチンの副作用として、激しい嘔吐が知られています。又、イリノテカンは副作用として、死亡を引き起こすこともある高度な下痢が知られています。ドキソルビシンには、心毒性が副作用として知られています。ビンクリスチンは、しびれが副作用として知られています。非小細胞癌には、分子標的型製剤であるゲフィチニブなどが用いられます。
乳癌とは
乳腺から発生するがんです。細胞標本をとった時の見た目から、非湿潤がん、湿潤がん、その他(特に乳首に発生するものはバジェット病と呼ばれます)に分類されます。
乳がんの増殖には、エストロゲンが大きく関与していると考えられています。閉経前乳がんには、抗エストロゲン薬+LH-RH 誘導体が用いられます。閉経後乳がんには、抗エストロゲン薬+アロマターゼ阻害薬が用いられます。
(補足:閉経前の女性のエストロゲン分泌は主に卵巣から行われる。閉経後の女性のエストロゲン分泌は主に脂肪組織においてアロマターゼにより合成される)
ホルモン療法に関しては、薬理学まとめ 代表的な性ホルモン代用薬及び拮抗薬 を参照。
乳がんの分子標的製剤として、トラスツズマブ(HER2がターゲット)が代表薬です。
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