症候とは、患者の示す様々な訴えや診察所見です。代表的な症候として、発熱、頭痛、発疹、黄疸、チアノーゼ、脱水、浮腫、悪心・嘔吐、嚥下障害、腹痛・下痢、便秘、腹部膨満、貧血、出血傾向、胸痛、心悸亢進・動悸、高血圧、低血圧、ショック、呼吸困難、咳、口渇、月経異常、痛み、意識障害、知覚障害、記憶障害、しびれ、痙れん、血尿、頻尿、視力障害、聴力障害、めまいがあります。なじみのない症候や、症候に関連する薬物がよく知られているものについて以下簡単に説明します。
発熱は、チクロピジン、サラゾスルファピリジン、抗精神薬等を使用中に注意が必要な症候です。無顆粒球症や悪性症候群等の初期症状です。
頭痛は、くも膜下出血が原因である頭痛が重大です。頭痛薬を用いている人に対して、今までに経験したことがない激しい頭痛が始まったら、すぐに救急車を呼ぶようにと伝えておくとよいです。
発疹は、抗菌薬や解熱鎮痛剤等を使用中に注意が必要な症候です。SJS( Stevens-Johnson Syndrome)、TEN(toxic epidermal necrolysis)といった重篤な皮膚症状の症候です。
黄疸は、血中ビリルビンが増加した状態です。肝障害を示唆する症候です。
チアノーゼとは、血中還元ヘモグロビン増加により身体表面が紫色になる状態です。心疾患などが原因です。
浮腫とは、細胞外液の増加による組織の腫れです。腎機能が落ちると浮腫が現れます。ACE 阻害剤の副作用として浮腫がよく知られています。
悪心・嘔吐とは、吐き気がしたり、吐いたりすることです。中枢神経のCTZ(chemoreceptor trigger zone)刺激により引き起こされます。CTZ 刺激を引き起こす薬としてD(ドパミン)受容体刺激薬が知られています。他にも抗ガン剤の副作用としてよく知られています。
下痢とは、健康時の便と比べて極めて柔らかい、もしくは液体状の便のことです。下痢を引き起こす薬として、イリノテカンが知られています。
便秘とは、便の排出が困難になっている状況のことです。便秘を引き起こす薬としてモルヒネが知られています。
腹部膨満とは、腹部がガスなどによって膨張している状態のことです。糖尿病治療薬である α-GI によって引き起こされる副作用として知られています。
出血傾向とは、簡単に出血し、一旦出血すると血が止まりにくい状態のことです。抗血栓薬の副作用として知られており、特にワーファリン使用時に注意すべき症候です。
ショックとは、血圧低下を伴う急性循環不全です。アナフィラキシーショックなどにより引き起こされます。(余談ですが、アナフィラキシーショックに対して用いるアドレナリン自己注射薬であるエピペンという薬があります。これはもともと、林業関係者がハチに刺された時に備えて携帯して使用するといった用途に限定されていたのですが、2011年9月から保険適応となった薬です。)
意識障害とは、外界の刺激に対する反応性や自発的活動性に変化がおきている状態のことです。血糖降下薬を用いた時の副作用として、低血糖による意識障害が知られています。
知覚障害とは、刺激に対する感覚に変化がおきている状態のことです。アセタゾラミドという緑内障に用いられる飲み薬の副作用として、指先のしびれ感(四肢知覚異常)がよく知られています。
記憶障害とは、記憶を思い出すことができない等の記憶に関する障害です。ベンゾジアゼピン系の薬の副作用として
前向性健忘という記憶障害が知られています。これは、薬を飲んでから眠り、夜中に眼が覚めた時の行動を覚えていないという記憶障害です。
頻尿とは、一日に何度も尿意を感じる状態のことです。(一応の基準は 8回。ただし人によるので、厳格な基準ではないです。)抗ヒスタミン薬の副作用として知られています。
視力障害とは、視力が低くなってしまう状態のことです。結核薬であるエタンブトールの副作用としてよく知られています。
新聞を毎日読み、視力の変化に注意するよう指導することがあります。
聴力障害とは、耳が聞こえにくい状態のことです。アミノグリコシド系抗生物質の特徴的な副作用として知られています。この副作用は、非可逆的(つまり一回聴力を失うと、回復しない)であることが知られており、薬物治療時には聴力の変化を注意深く経過観察する必要があります。
めまいとは、目が回るようなくらくらした感覚のことです。冷たい点耳薬を耳にさした時の副作用として知られています。
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