衝突理論とは
A + B → C という反応が進行するには、2つの分子が特定の方向から衝突し、衝突する分子のエネルギーが反応の活性化エネルギ-を超えている必要があるという理論です。
遷移状態理論とは
A + B → C という反応が進行する途中で、遷移状態(A・・B 活性複合体)と呼ばれる状態を通過する必要があるという理論です。
どちらの理論も、熱を上げれば反応速度が一般的に上がることを説明することができる理論です。すなわち、衝突理論に基づけば、熱を上げれば各分子のエネルギーが上昇するから反応速度が速くなると考えられます。また、遷移状態理論に基づけば、熱をあげることで遷移状態になるためのエネルギー(活性化エネルギー)を超える分子が多くなるため、反応速度が速くなると考えられます。
さらに
遷移状態理論によって、化学反応がおきるかどうかについて、温度だけでない要素も含め、衝突理論に比べてより詳細に考察することができます。すなわち、『遷移状態を考える』ことによって、衝突とは異なり『原子間の位置関係が意味をなす』という点がポイントとなります。その結果、例えば 「酵素(触媒)の存在下で反応速度が変化すること」を より理論的に記述することが可能になります。
位置関係の代表例は「高さ」です。基準点を定めると、ある物質が、高さをパラメータとして、重力による位置エネルギー U = mgh を 有します。同様に、反応に関与する粒子の持つ 様々な位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)を考えることにより、ある位置関係(例えば遷移状態)をとりやすいかどうか理解することができます。
そして、酵素は反応を行う「作業スペースのようなもの」を提供することで、酵素なしの場合と比べて、反応に関与する分子同士が、遷移状態をとりやすくなる と考えることができます。いいかえれば、遷移状態におけるポテンシャルエネルギーを低下させるような 都合よい空間を、酵素が提供してくれる、ということです。
これらの理論に関して、実験により検証が進んでいます。(物理における 理論 は、実験による実証により 検証されます)。すなわち、測定技術や分析技術の向上により、遷移状態にある物質を測定することが、近年可能になってきています。
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