薬剤師国家試験 第97回 問170 過去問解説

 問 題     

P-糖タンパク質に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 二次性能動輸送担体の1つである。
  2. 小腸上皮細胞に発現し、薬物の吸収を妨げる。
  3. 脳毛細血管内皮細胞に発現し、薬物の中枢移行を促進する。
  4. 肝細胞に発現し、薬物の胆汁排泄を促進する。
  5. 腎尿細管上皮細胞に発現し、薬物の再吸収を促進する。

 

 

 

 

 

正解.2, 4

 解 説     

二次性能動輸送とは、一次性能動輸送すなわち ATP を用いた濃度勾配に逆らった物質輸送により、生じたイオン勾配を駆動力として行われる物質輸送の形式です。P-糖タンパク質による能動輸送は、ATPを直接用いた一次性能動輸送です。よって、二次性能動輸送担体の 1 つではないので、選択肢 1 は誤りです。

ちなみに、P-糖タンパク質の Pは、permeability (透過性) の頭文字です。多剤耐性化した腫瘍細胞における、薬物の膜透過性を変化させる要素として発見されたという歴史的経緯を反映しています。

P-糖タンパク質は、様々な薬物を能動的に細胞外へ排出する役割を担っています。言い換えると、薬物の細胞内への吸収を妨げます。又、体内の様々な組織において発現し、小腸上皮細胞にも発現しています。

P-糖タンパク質は、血液脳関門における実態を担っています。すなわち、中枢へと薬物が移行しないように、能動的に薬物の排出を行なっています。薬物の中枢移行を「促進」ではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。

肝臓において発現しているP-糖タンパク質は、様々な薬物を胆汁中に排泄する役割を果たしています。速やかな薬物の排出に貢献しているといえます。

P-糖タンパク質は、腎尿細管上皮細胞にも発現しており薬物を尿細管腔側へと排出しています。すなわち、尿細管分泌を担っています。よって、再吸収の促進ではないため、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2,4 です。

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