問 題
70歳男性。経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋症)の患者に以下の薬剤が処方された。
問254
薬剤師として処方医に情報提供すべき内容として、適切でないのはどれか。1つ選べ。
- アスピリンと併用する必要がある。
- 投与開始日にはローディングドーズを必要とする。
- 重大な副作用として血栓性血小板減少性紫斑症(TTP)が発生することがあるので、投与開始後2ヶ月間は2週間に1回程度の血液検査を考慮する。
- クロピドグレルの用量調節には、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の測定が必要である。
- 本剤による血小板凝集抑制が問題となるような手術の場合には、14日以上前に投与を中止することが望ましい。
問255
クロピドグレルに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 肝臓で活性代謝物に変換され、抗血小板活性を示す。
- ADP受容体サブタイプP2Y12受容体を刺激する。
- 血小板のアデニル酸シクラーゼ活性を増強する。
- 血小板のシクロオキシゲナーゼを阻害する。
- 抗凝固薬と併用しても、出血傾向は増強されない。
正解.
問254:4
問255:1, 3
解 説
問254
クロピドグレル硫酸塩錠は、経口投与後、肝臓で代謝を受けて活性代謝物となり ADP 受容体と結合することにより、ADP 刺激による血小板の活性化を抑制することで血小板凝集を抑制します。経皮的冠動脈形成術が適用される虚血性心疾患の場合は、アスピリンとの併用が必要です。よって、選択肢 1 はその通りの記述です。
目標とする血中濃度に速やかに到達させるための、初回量のことを、負荷投与量、もしくはローディングドーズと呼びます。プラビックスは、初日に 300mg を投与し、以降は75mg 1日1錠で服用します。よって、選択肢 2 は適切な記述です。
選択肢 3 はその通りの記述です。
APTT を指標に投与量を調節するのはヘパリンです。よって、選択肢 4 は誤りです。
本剤による血小板凝集抑制が問題となるような手術の場合は、14日以上前に投与を中止することが望ましいとされています。よって、選択肢 5 はその通りの記述です。
以上より、正解は 4 です。
問255
クロピドグレル硫酸塩錠は、経口投与後、肝臓で代謝を受けて活性代謝物となり、不可逆的にADP 受容体サブタイプ P2Y12 と結合することにより、ADP の結合を抑制します。これにより、ADP 刺激による血小板の活性化を抑制することで血小板凝集を抑制します。
ADP刺激による血小板の活性化は、アデニル酸シクラーゼ活性を抑制し、cAMP 濃度を低下させることにより行われます。この ADP 刺激を、クロピドグレル硫酸塩錠は抑制するため、アデニル酸シクラーゼ活性は増強されます。
以上より、正解は 1,3 です。
血小板のシクロオキシゲナーゼを阻害するのは、アスピリンです。ちなみに、抗凝固薬と併用すると、出血傾向は増強されるので、注意が必要です。
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