問 題
69歳女性。近医より紹介され、不整脈の精密検査目的で入院することになり、以下の処方薬を持参した。血清クレアチニン値は1.4mg/dLであり、AST及びALTはそれぞれ30、35IU/Lであった。
問250
持参薬を確認した薬剤師が担当医に提案すべき内容として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- トリアゾラム錠には重大な薬剤性不整脈が知られているため中止する。
- 肝機能が低下しているので、カルベジロール錠をプロプラノロール塩酸塩錠に変更する。
- 肝機能が低下しているので、ラベプラゾールナトリウムを減量する。
- 腎機能が低下しているので、ワルファリンカリウムを減量する。
- 腎機能が低下しているので、シベンゾリンコハク酸塩を減量する。
問251
処方された個々の薬剤の薬理作用として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- カルベジロールは、アドレナリンβ受容体遮断作用に加え、アドレナリンα1受容体遮断作用も有する。
- カルベジロールは、プロプラノロールと異なり、内因性交感神経刺激作用(ISA)を有する。
- シベンゾリンは、心筋のNa+チャネル遮断作用とK+チャネル開口作用を有し、活動電位の持続時間を短縮する。
- ベプリジルは、電位依存性L型Ca2+チャネルを遮断し、房室結節の有効不応期を延長する。
- ワルファリンは、アンチトロンビンの作用を増強し、抗凝固作用を示す。
正解.
問250:5
問251:1, 4
解 説
問250
トリアゾラムには、特に重大な薬剤性不整脈は知られていません。よって、選択肢 1 は誤りです。
クレアチニンクリアランスが 60 mL/min (基準値は 100 前後)なので、腎機能の低下がうかがわれます。AST , ALT はほぼ基準値であることから、肝機能は正常であると考えられます。よって、選択肢 2,3 は誤りです。
ワルファリンカリウムは、CYP による代謝を受ける、主に肝代謝の薬です。よって、選択肢 4 は誤りです。
ジベンゾリンコハク酸塩(シベノール)は、クラス Ia 群に属する抗不整脈薬です。主に尿中排泄される薬です。
以上より、正解は 5 です。
問251
選択肢 1 はその通りの記述です。
カルベジロール(アーチスト)は、β遮断作用に加え α1 受容体遮断作用を主とした血管拡張作用も有する薬です。又、ISA:すなわち、内因性の交感神経刺激作用がありません。そのため、心臓に対する負荷が、ISA+の薬物よりも少ないといえます。よって、選択肢 2 は誤りです。
シベンゾリンは、クラス Ia 群に分類される抗不整脈薬です。Na+ チャネル遮断作用を有し、活動電位持続時間を延長させます。よって、短縮するわけではないので、選択肢 3 は誤りです。ちなみに、K+チャネルに対して、クラス Ia 群は抑制をする方向に働きます。
選択肢 4 はその通りの記述です。
ワルファリンは、ビタミン K 依存性血液凝固因子の産生を抑制することで抗凝固作用を示します。アンチトロンビン III は、凝固阻害因子です。この作用を増強して抗凝固作用を示すのは、ヘパリンです。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1,4 です。
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