問 題
23歳女性。体重45kg。てんかんと診断され、下記の処方による治療が開始された。
問272
この患者で予想される定常状態でのフェニトイン血中濃度とその解釈として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
ただし、この患者におけるフェニトインの体内動態に関するパラメータとして、ミカエリス定数5μg/mL、みかけの最大消失速度10mg/kg/dayが得られている。
- 血中濃度は10μg/mLと予想され、有効濃度域を下回っていると考えられる。
- 血中濃度は10μg/mLと予想され、有効濃度域の下限付近と考えられる。
- 血中濃度は10μg/mLと予想され、有効濃度域の上限付近と考えられる。
- 血中濃度は20μg/mLと予想され、有効濃度域の下限付近と考えられる。
- 血中濃度は20μg/mLと予想され、有効濃度域の上限付近と考えられる。
- 血中濃度は20μg/mLと予想され、有効濃度域の上限を超えていると考えられる。
問273
フェニトインの投与量が増加したとき、代謝飽和のために値が小さくなる薬物動態パラメータはどれか。1つ選べ。
- 全身クリアランス
- 分布容積
- 血中消失半減期
- 最高血中濃度/投与量
- 血中濃度時間曲線下面積/投与量
正解.
問272:2
問273:1
解 説
問272
フェニトインの有効血中濃度は、10 ~ 20 μg/mL です。よって、選択肢 1,3,4,6 は誤りです。
フェニトインの定常状態での血中濃度 (Css) は以下の式により表されます。(ミカエリス・メンテンの式の形。)
D/τ = (V max ・ Css) / Km + Css
※ D/τ ・・・ 投与量/投与間隔
※ Vmax・・・ みかけの最大消失速度
※ Css・・・ 定常状態の血中濃度
※ Km ・・・ ミカエリス定数
単位を合わせつつ、数字を代入します。
D/τ → 300 mg/day
Vmax → 45 kg なので 450 mg/day
Css は、求める変数なので x (μg/mL)
Km → 5 μg/mL
mg と μg が混ざっている。μg/mL = mg/L なので、全て mg/L にすると単位がきれいにあう。後は数字を代入して計算すると
300 = 450 x / 5 + x
300 (5 + x) = 450 x
150 x = 1500 となるので、x = 10 (μg/mL) です。
以上より、正解は 2 です。
問273
フェニトインは、1日投与量がある程度増えると血中濃度が急激に上がることが知られています。この理由は代謝飽和です。この時、全身クリアランス、つまり薬物を血中から体外へと排出する能力は小さくなっています。
以上より、選択肢 1 が正解です。
ちなみに他の選択肢も検討しておくと
分布容積(Vd)は D/C0 で表されます。初濃度 C0 は、D が増加すればその分増えるため全体としてはかわらないと考えられます。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
半減期は、代謝がなかなかされないのだから長くなります。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
最高血中濃度が高くなるので、分数の分子が大きくなるため全体として、大きくなります。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
血中濃度時間曲線下面積 (AUC) は、血中濃度が高くなることで大きくなると考えられます。分数の分子が大きくなるため全体として、大きくなります。よって、選択肢 5 は誤りです。
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