問 題
50歳男性。身長175cm、体重80kg、血清クレアチニン1.5mg/dL。眼内炎、遷延する発熱、中心静脈カテーテル刺入部位の発赤及び圧痛があり、中心静脈カテーテル刺入部関連感染の疑いと診断された。
細菌感染に対する抗菌療法に反応せず、カテーテル刺入部の膿、末梢血培養で真菌陽性、血液検査でβ-D-グルカン陽性のため、カテーテルを抜去し、ホスフルコナゾールによる治療を開始したが、治療反応性が悪かった。
その後、刺入部位膿と血液の培養の結果、Candida krusei(カンジダ属真菌)が検出された。
問300
この患者の真菌感染症に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 表在性真菌感染症である。
- ST(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)合剤が有効である。
- 日和見感染症と考えられる。
- 鳥類の糞便中で増殖したものが、感染源となった可能性が高い。
- 侵襲性カンジダ症の1つである。
問301
本症例に対して、アムホテリシンBリポソーム製剤を静脈内投与することとした。この薬剤の投与に関して適切なのはどれか。2つ選べ。
- 溶解液を加えて振とうし、沈殿物が認められた場合は、添付のフィルターでろ過する。
- 添付のフィルターは、アルコールで消毒すれば再使用できる。
- 15分以内で静脈内に点滴投与する。
- 投与中あるいは投与後に発熱、悪寒、悪心等が発現しないかを観察する。
- 投与期間中は、腎機能を定期的にモニターする。
正解.
問300:3, 5
問301:4, 5
解 説
問300
選択肢 1 ですが
真菌感染症は、皮膚などの表在性感染症と、臓器等まで侵される深在性感染症に分類されます。血を採って培養したら菌がいた、ということなので「深在性」です。表在性ではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
ST 合剤 は葉酸合成阻害薬です。広いスペクトラムを有しますが、カンジダには用いられません。アムホテリシンB,フルコナゾール などにより治療します。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当な記述です。
選択肢 4 ですが
鳥類の糞便中増殖が感染源といえば、クリプトコッカスがあげられます。カンジダに関する記述としては不適当と考えられます。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 5 は妥当な記述です。
以上より、問 300 の正解は 3,5 です。
問301
選択肢 1 ですが
アムホテリシン B は溶けにくいため、振とうし、沈殿物が認められた場合、きちんと溶けるまで激しく振盪します。添付のフィルターでろ過してしまうと、濃度不足になってしまいます。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
フィルターは汚染を避けるため、使用直前に開封、速やかに使用し、各々のバイアルについて新品を使用します。「アルコールで消毒すれば再使用できる」わけではありません。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
1日1回、1~2時間以上かけて点滴静注します。(97-262)よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4,5 は妥当な記述です。
以上より、正解は 4 ,5 です。
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