問 題
50歳男性。身長168cm、体重98kg。10年前より2型糖尿病を指摘されていたが未治療であった。健康診断の結果、糖尿病の教育入院となった。
入院時に日常生活について聴取したところ、患者は1人暮らしで間食や糖質を多く含む炭酸飲料の摂取が多かった。夕食時には大量飲酒を行うなど、食生活が乱れていた。日常あまり運動していなかった。
入院時の検査値は、血圧 140/82mmHg、HbA1c 9.3%(NGSP値)、随時血糖 234 mg/dL、血清クレアチニン 0.51mg/dL、T-Bil 0.7mg/dL、AST 60U/L、ALT 52U/L、γ-GTP 130U/L、尿糖 (+++)、尿タンパク (-)であった。
入院後、以下の薬剤が処方された。
問294
本症例では日常生活が乱れていることから、運動療法を併せて指導することとなった。この患者の運動療法に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 運動時の脈拍数は100~120拍/分以内に留めるように勧める。
- 増殖性網膜症を発症して重症化しても運動療法を継続する。
- 歩行運動を指導した場合は、消費カロリー分の食事量を増やすよう勧める。
- 肝機能障害があるため、空腹時(食前)の運動を勧める。
- インスリン感受性を高めるため、有酸素運動を勧める。
問295
治療により、血糖コントロールが良好となったため退院し、下記の処方で治療を継続することとなった。この患者の退院時に薬剤師が行う説明として適切なのはどれか。2つ選べ。
- 多尿・頻尿が見られても水分補給は控えること。
- 嘔吐や腹痛の場合は、連絡すること。
- 高所作業や自動車の運転等には注意すること。
- 処方5を注射し忘れた場合は、次回投与日に2回分を注射すること。
- タンパク質制限をした食事を摂取すること。
正解.
問294:1, 5
問295:2, 3
解 説
問294
太り気味のおじさん、放置していた 2 型糖尿病→入院という事例です。
選択肢 1 は妥当な記述です。
感覚的には、他人としゃべりながら続ける事ができる程度の運動量です。
選択肢 2 ですが
運動中の血圧上昇・血流増加に、網膜の血管が耐えられなくなって出血する危険性があるため、重症化した場合は運動療法を中止します。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
せっかく消費したのに増やしては意味がない、、、ですよね?選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
低血糖のおそれがあり、食前を勧める というのは適切ではないと考えられます。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当な記述です。
以上より、問294 の正解は 1,5 です。
問295
選択肢 1 ですが
脱水を避けるために、こまめな水分補給が推奨されます。水分補給を我慢させるのは適切ではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2,3 は妥当な記述です。
選択肢 2 は、いわゆるシックデイにおける血糖コントロールのための指導です。また、選択肢 3 は、低血糖による危険についての指導です。
選択肢 4 ですが
注射忘れに気づいた時点で、次の注射予定まで 72 時間以上あれば、気づいた時点で注射し、以降は予定通り継続します。次の予定まで 72 時間未満であれば、一回とばして、以降予定通りの注射を行います。「次回 2 回分注射」ではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
タンパク質制限は、腎臓病についての記述と考えられます。糖尿病性腎症では必要な制限ですが、本問症例では、クレアチニン基準値内、尿タンパク(ー) から、必要ないと判断されます。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、問295 の正解は 2,3 です。
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