問 題
25歳男性。造血幹細胞移植6ヶ月目で移植片対宿主病(GVHD)を発症し、閉塞性細気管支炎と診断されたため、入院し酸素療法を開始した。体温 38.2℃、動脈血酸素飽和度は85%、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2) 38Torr、動脈血pH 7.4である。なお、患者は免疫抑制剤としてタクロリムスを服用している。
問204
この患者の病態及び治療として正しいのはどれか。2つ選べ。
- GVHDは、移植した組織を宿主のT細胞が攻撃することで発症する。
- GVHDの急性期の治療には、メチルプレドニゾロンの短期間大量投与が必要である。
- 造血幹細胞の再移植が必要である。
- タクロリムスを減量する必要がある。
- 気管支拡張薬としてβ2刺激薬を用いる。
問205
呼吸器疾患患者の病態を把握するには動脈血酸素分圧(PaO2)とヘモグロビン酸素飽和度の関係(下図)を理解することが重要である。実線は、正常pH(7.4)血液のヘモグロビン酸素飽和度を表し、点線は、低pH(7.2)血液のヘモグロビン酸素飽和度を表す。また、動脈血酸素飽和度はヘモグロビン酸素飽和度と同じとする。
健常者及び前問の患者におけるガス交換や動脈血液ガスに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
なお、標準大気圧(1.013×105Pa)は上空から地上までに1m2あたり約1×104kgの気体が存在している状態である。水銀の密度は13.5g/mLである。
- 常温、常圧における吸気と呼気の成分気体の分圧は、吸気と呼気中の成分気体分子のモル比に比例する。
- 医療現場で汎用される圧力の単位Torrは水銀柱の高さで圧力を示すものであり、標準大気圧は1013Torrとなる。
- この患者のPaO2は約40Torr程度であると推定される。
- 同じPaO2の場合、PaCO2が増加するとヘモグロビンの酸素飽和度は低下する。
- 酸素療法を開始した後のPaO2とヘモグロビン酸素飽和度の関係は、図の点線に近づく。
正解.
問204:2, 5
問205:1, 4
解 説
問204
選択肢 1 ですが
GVDHは、「ドナーの免疫システム」が、「レシピエントの全身」を異物として攻撃する疾患です。つまり、組織「が」、宿主「を」攻撃します。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当な記述です。
選択肢 3 ですが
造血幹細胞を再移植すると、さらに攻撃が激しくなります。よって、選択肢 3 は誤りと考えられます。
選択肢 4 ですが
タクロリムスは拒絶反応抑制のために用いられています。拒絶を抑えるために、減量は不適切であると考えられます。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当な記述です。
以上より、問204 の正解は 2,5 です。
問205
選択肢 1 は妥当な記述です。
選択肢 2 ですが
1 Torr は、標準大気圧の 1/760 です。従って、標準大気圧は 760 Torr です。 1013 ではありません。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
動脈血酸素飽和度が 85%、pH 7.4 なので、約 60 Torr 程度と考えられます。40 Torr 程度ではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当な記述です。
PaCO2 が高い → CO2 がより血液に溶け込むため、酸性に偏る→実線から点線側への移動なので、ヘモグロビン酸素飽和度は低くなる という流れで、グラフから読むことができます。
選択肢 5 ですが
酸素療法を行うと、実線上においてヘモグロビン酸素飽和度が高い方へと状態が移動していくと考えられます。点線に近づくわけではありません。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、問205 の正解は 1,4 です。
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