薬剤師国家試験 第100回 問100 過去問解説

 問 題     

水酸基を有する医薬品Xのデータは以下の通りである。次の記述のうち正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 医薬品Xの300nmにおける比吸光度は1,000である。
  2. 医薬品Xの1.0×106mol/L溶液の旋光度を層長100mmのセルを用いて測定すると-3.0°~-3.3°となる。
  3. 医薬品Xの赤外吸収スペクトルにおいて、水酸基の伸縮振動スペクトルの波数は、測定溶媒との水素結合形成により減少する。
  4. 医薬品Xの結晶を作成しX線(波長1.54Å(0.154nm))を照射した。このとき、回折角2θが60°の回折点由来の面間隔は0.89Åである。ただし、√3=1.73とする。

 

 

 

 

 

正解.1, 3

 解 説     

選択肢 1 は、正しい選択肢です。
比吸光度は、100mL に、1g を溶かした時の吸光度です。一方、モル吸光係数は、1mol/L の時の吸光度です。1mol = 200g なので、200g/L の時の吸光度が、20,000 です。

比吸光度との比較を簡単にするために、モル吸光係数における「 /L 」 の部分を、「 /100mL 」 にしてみると、200g/L = 20g/100mL です。この時の吸光度が 20,000 です。すると 1g/100mL の時の吸光度は、溶けている物質が1/20 なので、吸光度も1/20 です。つまり、20000 × 1/20 = 1,000 となります。

選択肢 2 は旋光度が問われていますが、問題文で比旋光度が与えられているため、比旋光度と旋光度をつなぐ、以下の式を使います。

[α]:比旋光度、α:旋光度(実測)[°]、l:試料セルの長さ[mm]、c:溶液の濃度[g/mL]

上式に適当な値を代入してαについて解けばよいのですが、単位に気をつけながら計算してください。c については、分子量 200、濃度 1.0 × 10-6 [mol/L] より、次のように計算できます。

よって、旋光度は以下の2つの式より

となるので、旋光度は-3.0° ~-3.3° ではありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は、正しい選択肢です。
測定溶媒との水素結合 → 自由に振動していたものに水素結合というしばりがつくようなイメージなので、振動が弱くなる → 振動のエネルギーが低くなる → 吸収する赤外線の持つエネルギーも、低くなる → 波数(/cm)で言うと、低くなる。 という流れです。

選択肢 4 ですが
ブラッグの式 2d sin θ = n λ より、d = n λ / 2 sin θ です。θ = 30 ° なので、sin θ = 1/2 です。よって、 d = n × (1.54Å) となります。※ n は、整数。従って、0.89Å では、ありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

以上より、正解は 1,3 です。

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