問 題
74 歳男性。紅葉狩りのため、夫婦で 3 泊 4 日の温泉旅行に行った。帰宅後から発熱症状があり、体温 38.9 ℃(腋窩)、咳と呼吸が困難となる状態のため、総合病院を受診した。
胸部レントゲン画像所見等から肺炎と診断され、入院加療となった。入院後、採血、血液培養、尿中抗原検査が実施され、以下の処方の薬剤の投与が開始された。
(検査結果:入院直後)
体温 39.1 ℃、CRP 10.2 mg/dL、CCr 52 mL/min、AST 19 IU/L、ALT 18 IU/L、SpO2 92 %
| 点滴静注 レボフロキサシン注射液 (500 mg/生理食塩液 100 mL) |
1 バッグ( 500 mg ) |
| 1 日 1 回 午前 10 時~11 時 本日から 7 日間投与 |
投与開始 3 日目に血液培養検査の結果が出て、レジオネラ菌が原因であることがわかった。咳、呼吸困難の症状は軽快しており、食事も摂れるようになり、解熱傾向となった。
そこで、退院に向けて、主治医から処方の薬剤を内服に切り替えたいとの相談が病棟担当薬剤師にあった。
(検査結果:点滴開始 3 日後)
体温 37.2 ℃、CRP 2.3 mg/dL、CCr 48 mL/min、AST 19 IU/L、ALT 18 IU/L、SpO2 97 %
問206
処方されたレボフロキサシンは、ナリジクス酸からの構造変換により開発された抗菌薬である。レボフロキサシンに関する記述として、正しいのはどれか。 2 つ選べ。

- イソキノリン構造を持つ。
- ナリジクス酸の 6 位へフッ素原子を導入したことにより、抗菌作用が増強した。
- 不斉炭素の立体配置は R 配置である。
- 抗菌作用の発現には、 1 位の窒素原子と 3 位のカルボキシ基によるキレート形成が必須である。
- キラルスイッチにより副作用が軽減した医薬品である。
問207
内服への切り替えに関して、病棟担当薬剤師から主治医への提案として、適切なのはどれか。 2 つ選べ。
- CRP の数値が基準値以下になってから、切り替えてください。
- 腎機能の低下が認められますが、切り替えは可能です。
- 初回投与量は、点滴静注時と同量で構いません。
- 抗菌効果を高めるためにセファクロルを併用してください。
- キレート形成により吸収を高めるため、アルミニウム製剤を同時に服用させてください。
問206:2, 5
問207:2, 3
解 説
問206
選択肢 1 ですが
ニューキノロン系と呼ばれることからもわかるように、有する構造は「キノロン」です。「イソキノリン」ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
抗菌活性だけでなく、抗菌スペクトルの拡大や組織移行性の向上が見られました。
選択肢 3 ですが
不斉炭素は CH3 と H が置換基として存在する 1N の 1 つ上にある炭素です。R 体か S 体かを判断するには、以下の手順に従えばよいです。
1.不斉炭素に結合した 4 つの原子(原子団)に ① 番 ~ ④ 番までの優先順位をつけます。
2.優先順位の最も低い ④ 番の原子(原子団)を紙面奥側になるように構造式を回転させます。
3.残った優先順位 ① ~ ③ 番の原子(原子団)を ① → ② → ③ になるように見た時、それが時計回り(右回り)なら R 体、反時計回り(左回り)なら S 体です。
炭素における 4 つの置換基で一番優先順位が低い H の反対側から H を見るイメージを想像します。立体配置は S です。R ではありません。選択肢 3 は誤りです。下図参照

選択肢 4 ですが
キレート形成部位は、3 位のカルボキシ基と 4 位のカルボニル基です。「1 位の窒素原子」はキレート形成に関与しません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
ラセミ体であるオフロキサシンから、抗菌活性が強く副作用の少ない S 体のみを分離した医薬品です。
以上より、問 206 の正解は 2.5 です。
問207
選択肢 1 ですが
炎症反応を示す CRP が基準値以下になるのを待つ必要はありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
CCr = 48 mL/min と、確かに腎機能の低下が認められます。また、腎機能に応じた投与量調節により、内服への切り替え可能です。
選択肢 3 は妥当です。
レボフロキサシンは経口吸収性が極めて良く、バイオアベイラビリティが高い ため、静注 → 経口 の切り替えにおける初回投与量は点滴静注時と同量で構いません。
選択肢 4 ですが
セファクロルはセフェム系抗菌薬です。レジオネラ菌には無効であり、併用する意義がありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
ニューキノロン系と アルミニウム製剤などの金属製剤は、併用によりキレート形成して吸収が大幅に低下します。そのため、併用は避けるか 投与間隔を空けます。「吸収を高める」「同時に服用」ではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 207 の正解は 2,3 です。

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