問 題
放射性医薬品に汎用されるテクネチウム 99mTc は、99Mo から放射平衡を利用してジェネレーターにより得られる。このことに関する記述として正しいのはどれか。2 つ選べ。
- 放射平衡は、親核種の半減期が娘核種の半減期より十分長いときに成り立つ。
- 99Mo と 99mTc の間には永続平衡が成り立つ。
- 99mTc の壊変形式は核異性体転移である。
- カラムから未壊変の 99Mo を溶出する方法をミルキングという。
- カラムの担体には微量の Tl を含む NaI の単結晶を用いる。
解 説
選択肢 1 は妥当です。
放射性核種が A → B → C と逐次崩壊していく場合、ある程度の時間が経過すると、B と C の放射能の量的な関係がほぼ一定の比率で推移します。この状態を放射平衡と呼びます。放射平衡が成立するのは「親核種 A の半減期」が「娘核種 B の半減期」よりもある程度 (十分) 長い場合です。
ちなみにですが、「娘核種 B の半減期」が「親核種 A の半減期」よりも長い場合、十分な時間が経過すると親核種はすべて娘核種に壊変 してしまいます。放射平衡になりません。
選択肢 2 ですが
99Mo と 99mTc の間に成り立つのは「過渡平衡」です。永続平衡ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
核異性体転移(IT(isomeric transition))とは、α 壊変や β 壊変の後で、高エネルギー状態が長く続いて、ゆっくりと γ 線を放出しながら安定な原子へと状態が変化する現象のことです。γ 線 を放出しつつ、エネルギー的に不安定な原子が安定な原子へと変化していく「γ 壊変」の一形式です。質量数や原子番号は変化しません。核異性転移する代表的原子は、99mTc です。
選択肢 4 ですが
ミルキングとは、放射平衡にある系から「娘核種」を化学的に分離して採取する操作のことです。ミルキングによって得られるのは「99mTc」です。「99Mo を溶出」ではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
NaI (Tl) は、シンチレータ結晶の一つです。
シンチレータは「放射線があたると光 (シンチレーション光) を発する物質」です。放射線エネルギーを光エネルギーに変換する役割を持ちます。この光を光電子増倍管などで検出することで放射線を計測します。「カラムの単体」に用いるわけではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 95 の正解は 1,3 です。

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