問 題
フェノール、パラオキシ安息香酸及びトルエンを含む混合物試料を高速液体クロマトグラフィー (HPLC) により分析した。このことに関する記述として正しいのはどれか。2 つ選べ。なお、HPLC の分析条件は以下のとおりである。
分析条件
- 検出器:紫外吸光光度計 (測定波長:270nm)
- カラム:内径 4.6 mm、長さ 15 cm のステンレス管に粒径 5 μm の液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんする。
- カラム温度:35℃ 付近の一定温度
- 移動相:pH 7.0 の 0.1 mol/L リン酸塩緩衝液/メタノール (3:1) 混液
- 使用した HPLC は順相クロマトグラフィーである。
- 3 つの化合物のうち、最後に溶出するのはトルエンである。
- カラム温度を高くするとピーク高さは大きくなり、ピーク面積は減少する。
- パラオキシ安息香酸の保持時間を長くするには、移動相中の緩衝液の pH を低くする。
- トルエンの保持時間を長くするには、移動相中のメタノールの比率を高くする。
解 説
混合物に含まれる化合物の構造式は基礎知識です。以下の通りです。

構造から、トルエンが最も疎水性が高い、パラオキシ安息香酸が最も疎水性が低い = 親水性が高い = 極性が高い と読み取れます。
選択肢 1 ですが
カラム (固定相) が オクタデシルシリル化シリカゲルなので、固定相が疎水性です。従って、移動相は極性が高い、親水性 となります。固定相:疎水性ー移動相:親水性 の組み合わせは「逆相」です。「順相」ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2,5 についてですが
混合物の中で最も疎水性が高くカラムに吸着され続ける = 最後に溶出されるのはトルエンです。従って、選択肢 2 は妥当です。
トルエンの保持時間を長くする、つまり溶出されにくくするには、移動相が親水性寄りに (極性が高く) なればよいです。移動相はリン酸塩緩衝液/メタノール なので、リン酸塩緩衝液の比率を上げると移動相は親水性寄りに (極性が高く) なります。「メタノールの比率を高くする」ではありません。選択肢 5 は誤りです。
選択肢 3 ですが
ピーク面積 は 物質量に依存すると考えられます。「温度を高くすると・・・、ピーク面積は減少する」という記述は妥当ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
緩衝液の pH が低くなる → 液体中の [H+] が多くなる → パラオキシ安息香酸の H が外れにくくなり「分子型」の割合が多くなるため、保持時間は長くなる という流れです。
以上より、正解は 2,4 です。

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