薬剤師国家試験 第110回 問105 過去問解説

 問 題     

下図は、アセチル CoA が生合成される一連の反応を模式的に示している。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. 構造式 ア の Mg2は、リン酸部位の陰イオンを電気的に中和し、リン原子の求電子性を高めている。
  2. 矢印 イ で示した酸素原子は、酢酸イオンに由来する。
  3. アセチル CoA の点線で囲ったカルボニル基の炭素原子は、矢印 ウ の硫黄原子を酸素原子に置換したものに比べて求電子性が低い。
  4. 矢印 エ で示したリン原子は、5 価 4 配位構造をもつキラル中心である。
  5. アセチル CoA が生合成される過程において、CoA – SH のスルファニル基 (チオール基) オ は求核剤として作用し、SN2 反応によりアセチル化される。

 

 

 

 

 

正解.1, 2

 解 説     

選択肢 3,4,5 を誤りと判断したい問題です。


選択肢 1,2 は妥当です。


選択肢 3 ですが

チオエステル結合は高エネルギー結合とも呼ばれ、チオエステルのカルボニルは エステルに比べて反応性が高く、求核攻撃により容易にアシル基が転移することが知られています。

つまり、アセチル CoA の点線で囲ったカルボニル基の炭素原子は、S を O にしたものに比べて求電子性が「高い」です。求電子性が「低い」わけではありません。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 ですが

リン原子にくっついている上下の酸素原子は共鳴を考えれば等価な原子です。従って、4 つ異なる原子団がついているわけではないため、キラル中心ではありません。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 ですが

記述前半は妥当です。チオール基は求核剤として作用します。後半部分ですが、カルボン酸誘導体との反応なので「付加-脱離機構による求核置換反応 によりアセチル化」が妥当と考えられます。「SN2 反応により」ではありません。選択肢 5 は誤りです。


以上より、正解は 1,2 です。

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