薬剤師国家試験 第110回 問178 過去問解説

 問 題     

図中の直線は、3 種の薬物 A、B、C がそれぞれ溶解補助剤 X と可溶性複合体 AX、BX、CX を形成し、溶解度が増大する様子を示している。

以下の記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。

なお、いずれの場合も安定度定数Kは次式で表される。

ただし、[  ]は濃度を示す。

  1. 溶解補助剤を添加しないとき、薬物の溶解度の大小関係は、A = C > B である。
  2. 可溶性複合体 AX と可溶性複合体 BX の安定度定数は等しい。
  3. 可溶性複合体 AX の安定度定数は、可溶性複合体 CX の安定度定数より大きい。
  4. 可溶性複合体 BX の安定度定数は、可溶性複合体 CX の安定度定数より小さい。
  5. K の値が小さいほど、薬物と X は安定な可溶性複合体を形成する。

 

 

 

 

 

正解.1, 3

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
溶解補助剤を添加しない → 横軸が 0 です。溶解補助剤が入っていないのだから、この溶解度は「薬物の溶解度」です。 縦軸を読み取ると A = C かつ、B がより小さいとわかります。 A = C > B です。


選択肢 2 ですが
A の安定度定数 KA、B の安定度定数 KB とおいて考えます。薬物濃度は溶けるだけ溶かせばそれぞれ溶解度が決まっているため定数です。それぞれ SA、SB とします。

安定度定数は定数なので、適当な [X] で考えてみます。A の直線と B の直線は明らかに傾きが同じです。溶解度の増加分とは、可溶性複合体の増加分です。

つまり、傾きが同じ → 「同じ量の X 添加」時に「形成される AX の量」と 「形成される BX の量」が同じと読み取れます。従って、[AX]、[BX] は 『X が同じなら 同値』です。

適当に [X] = k として、その時の [AX] = [BX] = x とすると
KA = x/([SA]・k)
KB = x/([SB]・k) と表せます。SA ≠ SB だったから、KA ≠ KB です。

従って、選択肢 2 は誤りです。


選択肢 3 は妥当です。
[X] = k の時、傾きが A よりも C が小さいので
[AX] > [CX] と読み取れます。溶解度 SA = SC  = s とおきます。

KA = [AX]/(s・k)
KC = [CX]/s・k と表せます。

分母が同じ、分子が [AX] の方が大 → KA > Kc です。


選択肢 4 ですが
[X] = k の時、傾きが B よりも C が小さいので
[BX] > [CX] と読み取れます。溶解度 Sc > SB  です。

KB = [BX]/SB・k
Kc = [CX]/Sc・k と表せます。

分母は Kc の方が大きく、分子は Kc の方が小さい
KB > Kc です。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 ですが
[薬物]、[X] が一定とします。K の値が小さい → [可溶性複合体] が小さい ということです。より安定な可溶性複合体を形成するほど、[可溶性複合体] は大きくなる → K の値が大きいと考えられます。選択肢 5 は誤りです。


以上より、正解は 1,3 です。

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