薬剤師国家試験 第110回 問252-253 過去問解説

　問 題　　　　　

28 歳女性。高校教員として勤務している。ここ数ケ月、仕事のストレスから風邪をひきやすく、体調が優れない日が続いていた。最近になり、左胸背部に赤い発疹が多く現れ、ピリピリとする痛みが出てきたことから、近医を受診した。

診断の結果、帯状疱疹と診断され、以下の処方箋を持って薬局を訪れた。

問252

この患者への説明として、適切なのはどれか。2 つ選べ。

1. 他の教職員や生徒へ感染させる危険性があるため、出勤停止となります。
2. むくみが現れたり、尿量が減った場合は、すぐに知らせてください。
3. 帯状疱疹は再発する可能性があります。
4. 服用期間中は水分摂取を控えるようにしてください。
5. 痛みが強い時は患部を冷やしてください。

問253

処方薬で治療を継続した結果、皮疹は治まったものの、その部位で断続的な刺すような痛みや持続的で焼けるような痛みが生じるようになった。

これらの症状に対して使用する薬物の作用機序として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

1. 電位依存性 Ca^2＋ チャネルの機能の抑制
2. γ – アミノ酪酸 GABA_B 受容体の刺激
3. オピオイド μ 受容体の刺激
4. セロトニン 5 – HT_1B/1D 受容体の刺激
5. カルシトニン遺伝子関連ペプチド (CGRP) 受容体の遮断

 

 

 

 

 

　解 説　　　　　

問252

選択肢 1 ですが
高校教員なので「出勤時、周りは 15 歳以上」という問題設定です。妊婦や 赤ちゃんはあまりいない勤務環境なので「出勤停止」にならない可能性が高い、少なくとも職場の規則等に依存すると考えられます。従って「薬剤師から患者への説明」としては不適切です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
バラシクロビルの副作用である腎障害の可能性があるため、初期症状が出たらすぐに知らせてもらうように説明します。

選択肢 3 は妥当です。
帯状疱疹再発可能性は それほど高くなく、また、1 年以内の再発は極めてまれとされています。再発の可能性があることを説明するのは妥当ですが、一方で不安を高める説明にならないように心がけるとよいです。

選択肢 4 ですが
腎臓への負担軽減のため、普段より多めの水分摂取が望ましいです。「服用期間中は水分摂取を控える」という説明は不適切です。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
帯状疱疹に伴う痛みは、温めて血流を良くすることで改善することが知られています。「患部を冷やして」という説明は不適切です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、問 252 の正解は 2,3 です。

問253

帯状疱疹に伴う痛みに対する鎮痛薬といえば、近い過去問の症例でも取り上げられていた プレガバリン がまず浮かぶのではないでしょうか。すると「2 つ」は選べない… と悩んだかもしれません。

試験本番では
・GABA B 刺激 → バクロフェン、筋弛緩なので誤り
・セロトニン 5 – HT1B/1D → トリプタン系、偏頭痛薬なので誤り
・CGRP 受容体遮断 → エレヌマブ、偏頭痛薬なので誤り

→ 選択肢 2,4,5 を誤り
と判断して、1,3 を選べると良い問題ではないでしょうか。

選択肢 1 は妥当です。
プレガバリンに対応する作用機序です。

選択肢 2 ですが
筋弛緩薬である バクロフェン の作用機序です。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
NSAIDs やアセトアミノフェンで効果不十分である時に用いられる トラマドールなどの作用機序です。

選択肢 4 ですが
トリプタン系 片頭痛薬の作用機序です。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
片頭痛薬 エレヌマブ の作用機序です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、問 253 の正解は 1,3 です。