薬剤師国家試験 第110回 問256-257 過去問解説

 問 題     

63 歳男性。5 年前に糖尿病性腎症と診断され、シタグリプチンリン酸塩水和物、アルファカルシドール、ニフェジピン、酸化マグネシウム、セベラマー塩酸塩、ポリスチレンスルホン酸カルシウムで治療してきた。

2 年前に貧血症状が現れ、ダルベポエチンアルファ (遺伝子組換え) が追加された。現在のダルベポエチンアルファ (遺伝子組換え) の用法・用量は、処方 1 のとおりである。

最近、血液中のヘモグロビン濃度が低下し、目標値を維持することができておらず、その原因も不明であった。なお、血清フェリチン値は 126 ng/mL、トランスフェリン飽和度は 33 % と正常域にある。

この状態をふまえて、腎臓内科医は、処方 1 から処方 2 へ変更した。

問256

処方 1 又は処方 2 の薬物の作用機序として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. 補体 C5 に結合することで、補体 C5 を介した赤血球の破壊を抑制する。
  2. チミジル酸合成酵素の補酵素として作用することで、赤血球の産生を促進する。
  3. ヘム合成酵素の補酵素として作用することで、ヘムの合成を促進する。
  4. 赤芽球系前駆細胞に作用することで、赤血球への分化を促進する。
  5. 低酸素誘導因子 (HIF) プロリン水酸化酵素を阻害することで、HIF を介したエリスロポエチンの産生を促進する。

問257

処方 2 の薬剤の重大な副作用はどれか。1 つ選べ。

  1. 心室性不整脈
  2. 白血球減少
  3. 低血圧
  4. 血栓塞栓症
  5. 下痢

 

 

 

 

 

正解.
問256:4, 5
問257:4

 解 説     

問256

選択肢 1 ですが
抗補体 (C5) モノクローナル抗体製剤である「エクリズマブ、ラブリズマブ、クロバリマブ」などに関する記述です。処方 1,2 に関する記述ではありません。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 ですが

チミジル酸合成酵素の補酵素は、5,10 – メチレンテトラヒドロ葉酸です。処方 1,2 に関する記述ではありません。選択肢 2 は誤りです。


選択肢 3 ですが

ヘム合成酵素の補酵素として作用し、ヘムの合成を促進するのは「ビタミン B6」です。処方 1,2 に関する記述ではありません。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4,5 は妥当です。

選択肢 4 が処方 1、選択肢 5 が処方 2 に該当します。


以上より、問 256 の正解は 4,5 です。

類題 109-161
https://yaku-tik.com/yakugaku/109-161/

問257

HIF – PH 阻害薬 (低酸素誘導因子 (HIF:Hypoxia Inducible Factor) プロリン水酸化酵素阻害薬) の重大な副作用は血栓塞栓症です。


以上より、問 257 の正解は 4 です。


ちなみにですが

造血作用増加 → 一時的鉄分不足 → 血液粘稠性増加 という流れが血栓塞栓症がおきやすくなる機序と考えられています。

そのため、鉄欠乏が血栓症リスクを上昇させます。HIF – PH 阻害薬使用前には必ず鉄動態を評価する事が重要です。鉄欠乏の評価はフェリチンと トランスフェリン飽和度で行います。本症例では問題ありません。

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