薬剤師国家試験 第110回 問260-261 過去問解説

 問 題     

48 歳男性。2 ケ月前から食欲の低下を感じ、消化器内科で精査したところ、ヘリコバクター・ピロリ陽性と診断され、一次除菌を行うこととなった。

問260

この処方薬の服薬指導時の患者への説明として、適切なのはどれか。2 つ選べ。

  1. ボノプラザン錠は、服用時に噛んだり、砕いたりすると効果が減弱します。
  2. よくみられる副作用として、腹痛や頻回の下痢があります。
  3. 味覚異常が現れることがありますが、多くの場合数日で治まります。
  4. 服用期間中は激しい運動を控えてください。
  5. 処方分の薬を飲み終えた後、すぐに除菌の判定を行います。

問261

ヘリコバクター・ピロリの除菌療法において、ボノプラザン以外にラベプラゾールも用いられてきた。ボノプラザン又はラベプラゾールに関する記述として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. ボノプラザンは、壁細胞における H,K-ATPase の発現を抑制する。
  2. ボノプラザンは、胃酸による活性化を必要としない。
  3. ボノプラザンは、弱酸性であり、壁細胞内に分子形として集積する。
  4. ラベプラゾールは、Kと競合して、壁細胞からの H分泌を阻害する。
  5. ラベプラゾールは、H,K-ATPase とジスルフィド結合を形成する。

 

 

 

 

 

正解.
問260:2, 3
問261:2, 5

 解 説     

問260

選択肢 1 ですが
ボノプラザンは K+ 競合型 PPI です。他のPPI のように腸溶コーティングされていません。そのため、噛んだり砕いたりしても「効果が減弱」するわけではないと考えられます。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2,3 は妥当です。

代表的な副作用についての記述です。


選択肢 4 ですが

激しい運動を控える必要がある薬としては、血管拡張作用がある薬や、出血傾向を強める薬の使用時などがあげられます。ヘリコバクター・ピロリの一次除菌治療薬を使用する際に、特に運動制限は必要ないと考えられます。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 ですが

ピロリ菌の除菌判定は、除菌薬の内服を終えてから「4 週間以上」経過してから行います。


以上より、問 260 の正解は 2,3 です。

問261

PPI と P – CAB の比較に関する問題です。3つのポイントに注目してまとめておきましょう。1:酸による活性化、2:プロトンポンプとの結合、3:分泌細管への貯留 の 3 点です。

選択肢 1 ですが
壁細胞における 発現を抑制するという作用はありません。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 は妥当です。

ボノプラザンは、胃酸による活性化を必要としません。


選択肢 3 ですが

3 つのポイント以外で余裕があればおさえておきましょう。ボノプラザンは強い塩基性です。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 ですが

K+ と競合するのはボノプラザンです。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 は妥当です。

PPI であるラベプラゾールについての記述です。


以上より、問 261 の正解は 2,5 です。

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