薬剤師国家試験 第110回 問264-265 過去問解説

 問 題     

62 歳女性。最近 2 週間ほど、咳嗽・喀痰があり、微熱も続いていた。市販薬を継続服用していたが改善せず、呼吸器内科を受診したところ、肺結核と診断された。処方は以下のとおりである。

問264

この患者に説明する内容として、適切なのはどれか。2 つ選べ。

  1. しっかりと服薬遵守すれば、今回処方された分の薬で治療が終了すること。
  2. リファンピシンの服用により、尿や便が橙赤色等に着色する可能性があること。
  3. イソニアジドの副作用として高尿酸血症があること。
  4. ピラジナミドは、チーズなどのチラミンを多く含む食品との相互作用により、動悸が現れること。
  5. エタンブトールの副作用として視力障害があること。

問265

処方 1 及び処方 2 のいずれかの薬物の結核菌に対する作用として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. DNA 依存性 RNA ポリメラーゼを阻害して、RNA 合成を抑制する。
  2. ミコール酸の合成を阻害して、細胞壁合成を抑制する。
  3. トポイソメラーゼ Ⅳ と DNA ジャイレースを阻害して、核酸合成を抑制する。
  4. ATP 合成酵素を阻害して、結核菌細胞内のATP量を低下させる。
  5. リボソーム 30S サブユニットに作用して、タンパク質合成を阻害する。

 

 

 

 

 

正解.
問264:2, 5
問265:1, 2

 解 説     

問264

選択肢 1 ですが
以前は結核の治療に 2 ~ 3 年以上要しましたが、最短 6 カ月で完了するようになっています。結核診断後初回の、今回処方された 30 日分の薬で「治療が終了」するわけではありません。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 は妥当です。

リファンピシン及びその代謝物によって、尿や便の色が変わることがあります。気にする必要はないのですが、知らないとびっくりするので説明しておく必要があります。


選択肢 3,4 ですが

イソニアジドとピラジナミドが逆です。

イソニアジドは
MAO 阻害作用を有します。そのため、チラミンの代謝を阻害するので、チラミンを大量に含むチーズなどを食べすぎないように指導します。また、ヒスチジン → ヒスタミン → MAO で代謝という流れも阻害するので、ヒスチジンを多く含むマグロなどの食べ過ぎに注意するよう指導します。

ピラジナミドは
副作用として尿酸値上昇や痛風発作があらわれることがあります。

また、ピラジナミドを含む抗結核薬による治療では、薬剤逆説反応 (結核菌が減少、陰性化にもかかわらず、胸部 X 線写真上陰影増大等) が認められることがあります。分離された結核菌が感受性菌で、患者が規則的に薬剤を服用している場合には、化学療法を中止・変更する必要はありません。


選択肢 5 は妥当です。

エタンブトールの副作用に関する説明です。


以上より、問 264 の正解は 2,5 です。

類題 109-300301
https://yaku-tik.com/yakugaku/109-300/

類題 108-228229
https://yaku-tik.com/yakugaku/108-228/

問265

選択肢 1 は妥当です。
DNA 依存性 RNA ポリメラーゼ阻害は「リファンピシン」の作用機序です。


選択肢 2 は妥当です。

結核菌などの抗酸菌細胞壁の特徴は、分子量の大きな脂肪酸であるミコール酸を含むことです。そして、ミコール酸合成阻害は「イソニアジド」の作用機序です。


選択肢 3 ですが

DNA ジャイレース及びトポイソメラーゼ Ⅳ を阻害するのは「ニューキノロン系」の作用機序です。処方 1,2 の薬物の結核菌に対する作用ではありません。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 ですが

ATP 合成酵素阻害は、多剤耐性肺結核に用いられるベダキリンの作用機序です。処方 1,2 の薬物の結核菌に対する作用ではありません。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 ですが

リボソーム 30S サブユニットに作用するのは「アミノグリコシド系」の作用機序です。処方 1,2 の薬物の結核菌に対する作用ではありません。選択肢 5 は誤りです。


以上より、問 265 の正解は 1,2 です。

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