薬剤師国家試験 第110回 問266-267 過去問解説

　問 題　　　　　

45 歳男性。喫煙歴 20 年 (1 日 20 ～ 30 本程度)。男性は、最近、痰が絡んで咳込みが多く、健康のために禁煙を希望し、薬局を訪れた。

薬剤師は、禁煙サポートのため男性の生活習慣及び健康状態を聞き取り、ニコチンガム製剤による禁煙を勧めることにした。

男性と話し合いのうえ、禁煙期間の目標を 90 日に設定し、最初の 1 週間は 1 日の使用個数の目安を以下とした。

(販売する一般用医薬品)

• ニコチンガム製剤(ニコチン2mg含有/個)

(使用個数の目安)

• 1 日 9 個

また、男性に対して習慣的に摂取している飲食物を質問したところ、以下の情報が得られた。

• 炭酸水 (a) を頻繁に飲用している。
• 亜鉛含有サプリメント (b) を食後に摂取している。
• 気分を落ち着かせるために、セントジョーンズワート含有食品 (c) を毎日摂取している。

問266

ニコチンガム製剤による禁煙補助療法の十分な効果を得るために、摂取を控える必要がある飲食物とその理由の組合せとして正しいのはどれか。1 つ選べ。

問267

薬剤師は、禁煙補助療法導入時のニコチンガム製剤の使用方法及び使用上の注意を説明することにした。薬剤師が説明する内容として、適切なのはどれか。2 つ選べ。

1. ピリッとした味を感じるまでゆっくりと噛んだ後、頬と歯茎の間に置く。
2. 喫煙の欲求がなくても定期的に使用する。
3. 治療開始時は、喫煙との併用が可能である。
4. 使用中に唾液が多くなった場合は、唾液を飲み込まず、ティッシュペーパーなどに唾液を出す。
5. 使用後のガムは、医療廃棄物として薬局で回収する。

 

 

 

 

 

　解 説　　　　　

問266

亜鉛と セントジョーンズワートは特に問題なく、飲食物は a の炭酸水だろうと判断できたのではないでしょうか。正解は 1 or 2 です。

ニコチンの構造式について、正確に覚えていなくても、環状構造が含まれ、かつ環に窒素含んだアルカロイドだったことは覚えているのではないかと思われます。

参考　ニコチンの構造式　107-211 より

アルカロイドであれば塩基性 → 「ニコチンは塩基性薬物」→ 口腔内が炭酸水で酸性に傾く → 「酸性条件下で、塩基性薬物の一種であるニコチンが吸収低下する」という流れは妥当である　と推測できます。

ちなみにですが
酸性条件下で塩基性薬物の吸収が低下するのは、酸塩基反応が起こりやすくなり、その結果、薬物「分子型割合」が減るためです。

分子型 → 脂溶性高い → 吸収されやすい
イオン型 → 水溶性高い → 吸収されにくい です。

以上より、問 266 の正解は 2 です。

問267

実習時にニコチンガムの説明を受けたり
実際に使ったことがないと難しい問題だったと思われます。

選択肢 1 は妥当です。
「ゆっくり噛む → 頬と歯ぐきの間に 1 分ほど置く」サイクルを 30 分から 60 分ほど繰り返します。

選択肢 2,3 ですが
禁煙したい人の禁煙時における ニコチン離脱症状軽減 に使うのがニコチンガムです。ニコチンガムは「タバコ吸いたいな」と思った時に使います。喫煙の欲求がなければ使用しません。また、喫煙しないための薬なので、喫煙と併用してはいけません。選択肢 2,3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
飲み込むと、気分が悪くなるなど副作用の可能性があります。

選択肢 5 ですが
使用後のガムは医療廃棄物ではありません。薬局で回収もしません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、問 267 の正解は 1,4 です。