問 題
68 歳女性。身長 155 cm、体重 50 kg。下腿浮腫及び尿の泡立ちを自覚するようになり、近医を受診した。タンパク尿及び低アルブミン血症を認め、ネフローゼ症候群が疑われ、精査加療のため総合病院に入院となった。検査の結果、以下の治療を開始した。
(入院時検査値)
血圧 142/92 mmHg、血清総タンパク 5.1 g/dL、血清アルブミン 2.6 g/dL、BUN 38 mg/dL、血清クレアチニン 1.0 mg/dL、総コレステロール 338 mg/dL、LDL-C 248 mg/dL、Na 142 mEq/L、K 4.2 mEq/L、尿タンパク (3+)

1 週間後、浮腫の軽減が不十分であったため、多職種によるカンファレンスで薬剤師に意見が求められた。
問268
薬剤師がカンファレンスで提案する内容として、適切なのはどれか。2 つ選べ。
- ヒドロクロロチアジドの追加
- プレドニゾロンの中止
- フロセミドの増量
- カルペリチドの追加
- ピタバスタチンの減量
問269
治療開始後、ステロイド抵抗性との診断を受け、シクロスポリンカプセルが追加されることになった。そのため、薬剤師は処方 2 の薬剤についてフルバスタチンへの変更を医師に提案した。
その理由として正しいのはどれか。1 つ選べ。
- シクロスポリンがピタバスタチンの消化管吸収を阻害するため。
- シクロスポリンがピタバスタチンの肝取り込みを阻害するため。
- ピタバスタチンがシクロスポリンの代謝を阻害するため。
- ピタバスタチンがシクロスポリンの尿細管分泌を阻害するため。
- シクロスポリンがピタバスタチンの尿細管再吸収を阻害するため。
問268:1, 3
問269:2
解 説
問268
浮腫の軽減不十分と対応しているのが
「ヒドロクロロチアジドの追加」「フロセミドの増量」です。共に利尿薬です。
利尿薬の作用機序をふまえた提案、及び、フロセミドの用法・用量について、通常、成人にはフロセミドとして 1 日 1 回 40 〜 80 mg を投与し、腎機能不全等の場合さらに大量に用いることもある ことなどをふまえた意見が、薬剤師として求められている状況 と考えられます。
以上より、問 268 の正解は 1,3 です。
問269
ネフローゼに対してステロイドが無効あるいは再発を繰り返す場合、免疫抑制剤のシクロスポリンやタクロリムス水和物、抗体医薬のリツキシマブが追加されることがあります。
ピタバスタチンは OATP 1B1 により 血中 → 肝臓へ取り込まれます。そして、シクロスポリンは OATP 1B1 を阻害します。シクロスポリンとスタチンの併用による、トランスポータを介した相互作用 は基礎知識です。
ちなみにですが
シクロスポリンと併用禁忌ではない (併用注意) スタチンは、本試験時点 フルバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチンがあげられます。
以上より、問 269 の正解は 2 です。

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