問 題
36 歳女性。糖尿病の家族歴あり。妊娠のため、近隣の産婦人科クリニックを受診した。妊娠初期から定期的に血糖測定していたところ、血糖値の上昇傾向が見られ、食事療法を行っていた。
妊娠 24 週時 (妊娠中期) に実施した 75 g ブドウ糖負荷試験で、空腹時血糖値 98 mg/dL、1 時間値 192 mg/dL、2 時間値 180 mg/dL であったため、紹介された総合病院に管理入院し、食事療法に加えて、血糖自己測定及びインスリン療法が導入された。
(入院時検査値)
白血球 8,500/μL、Hb 12.0g/dL、血小板 32.0×104/μL、随時血糖 178mg/dL、HbA1c 5.7%
問278
薬剤師が患者に提供する情報として、正しいのはどれか。2 つ選べ。
- 妊娠中期以降はインスリン抵抗性が改善するので、投与量を漸減していく可能性が高い。
- インスリン注射に不安があれば、処方 2 を経口血糖降下薬に置き換える BOT 療法 (Basal Supported Oral Therapy) の導入が可能である。
- 出産後に血糖値が正常化しても、食事療法と運動療法の継続や定期的な検査が必要である。
- 妊娠中は 1 日に複数回の血糖自己測定により、厳格な血糖管理を行う。
- 出産直後は高血糖を起こしやすいので、経口血糖降下薬を追加する可能性がある。
問279
処方 1 の薬剤が持効性を示す機構として、正しいのはどれか。1 つ選べ。
- インスリン分子を結晶化することで、溶解性を低下させた。
- 投与後、皮下組織において、インスリン分子が安定した可溶性のマルチヘキサマーを形成するようにした。
- インスリン分子の等電点を改変することで、生理的な pH で微細な沈殿物を形成するようにした。
- インスリン分子に脂肪酸を結合させることで、血中でアルブミンと複合体を形成するようにした。
- インスリン分子をプロタミン硫酸塩との複合体とすることで、溶解速度を低下させた。
問278：3, 4
問279：4
解 説
問278
選択肢 1 ですが
分娩が近づくほどインスリン抵抗性が増大します。「妊娠中期以降はインスリン抵抗性が改善」するわけではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
インスリンは胎盤を通過しないのですが、経口血糖降下薬の場合、胎児への影響を否定しきれません。そのため、原則インスリン注射となります。選択肢 2 は誤りです。
ちなみに、元々糖尿病のある妊婦で 経口血糖降下薬を使用していた場合、インスリン注射への切り替えが強く推奨されます。
選択肢 3,4 は妥当です。
妊娠中、及び出産後に関する記述です。
選択肢 5 ですが
出産直後、急激にインスリン抵抗性が低下します。そのため、起こしやすいのは「低血糖」です。「出産直後は高血糖を起こしやすい」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 278 の正解は 3,4 です。
問279
インスリン デテミルは、持効型のインスリン注射剤です。 「デテミル」が detached threonine + myristic acid から由来しており、インスリンにミリスチン酸基を付与したものです。「ミリスチン酸基を付与」と対応するのが「脂肪酸を結合」です。
以上より、問 279 の正解は 4 です。
類題 103-266267268269
https://yaku-tik.com/yakugaku/103-266/
コメント