問 題
65 歳男性。帯状疱疹の予防のためにワクチン接種を希望した。男性は、かかりつけの病院で接種可能かを確認し、接種の予約を行った。
接種の当日は平熱で、問診の結果からワクチン接種が可能と判定され、以下のワクチン製剤の 1 回目の接種を行うことになった。

問282
このワクチン製剤に関する記述として、正しいのはどれか。2 つ選べ。
- 専用溶解用液中の脂質粒子は、内水層を有する。
- ポリソルベート 80 は、微生物の発育を阻止する目的で添加されている。
- 精製白糖は、無痛化を目的に添加されている。
- 凍結を避けて、2 ~ 8 ℃ で保存する。
- 血液中に移行後、製剤が徐々に分解されて有効成分を放出する。
問283
ワクチン接種後、被接種者が待合室に向かう途中で気分が悪いとその場に倒れこんだ。その場に居合わせた薬剤師と看護師は、待機している医師に対応を要請した。
患者は呼びかけには反応するが、頻脈と蒼白が観察された。駆けつけた医師は被接種者の症状からアナフィラキシーを疑ったため、その場に居合わせた薬剤師と看護師とともにチームとして患者に対応した。
この患者に対する迅速な対応として、適切なのはどれか。2 つ選べ。
- 患者を仰臥位に保持
- アドレナリンの静脈内投与
- 急速輸液に使用する等張電解質液の準備
- 二相性反応予防に使用する抗ヒスタミン薬の準備
- 胸骨圧迫と人工呼吸の実施
問282:1, 4
問283:1, 3
解 説
問282
選択肢 1 は妥当です。
「・・・リポソームからなる」とあるため、脂質二重膜から成り、内水層を有します。
選択肢 2 ですが
ポリソルベート 80 は、非イオン性界面活性剤であり、乳化剤として用いられることが知られています。従って、溶解補助目的と考えられます。「微生物の発育を阻止」が目的ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
注射時の痛みを緩和する無痛化剤として、局所麻酔効果を有するベンジルアルコール 等が用いられます。凍結乾燥剤における精製白糖は、凍結 及び 凍結乾燥に伴う成分構造変化を和らげる保護材として機能します。
結構乱暴に扱われる段ボール箱の中に貴重品を入れる時、ふわふわのプチプチや新聞紙を充填するイメージです。貴重品が有効成分で、プチプチや新聞紙が精製白糖と対応します。
選択肢 4 は妥当です。
凍結 → アジュバントの構造変化 → ワクチン効能が失われる という流れを避けるためです。
選択肢 5 ですが
ワクチン製剤なので、徐放性ではないだろうと考えて誤りと判断すればよいと思われます。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 282 の正解は 1,4 です。
問283
ワクチン接種 100 万回 に対し、数回 ~ 数十回程度見られる、稀だがよくある事例についての問題です。「アナフィラキシーといえば、アレルギーがある患者でエピペン筋注」を思い出し、選択肢 2 を「よく読まずに飛びついてはいけない」点に注意が必要です。
選択肢 1,3 は妥当です。
仰向け (背中が下、仰臥位:ぎょうがい) にして、輸液準備します。
選択肢 2 ですが
アドレナリンは筋注で投与します。静脈内投与ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 4 ですが
二相性反応とは、抗原曝露してすぐにアナフィラキシー症状が起きた後、1 ~ 48 時間程度の内に、抗原再暴露なく、再びアナフィラキシー症状が生じることです。アドレナリン再投与を行います。
「抗ヒスタミン薬」は、アナフィラキシーの皮膚症状に対して用いられます。「二相性反応予防」には用いられません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
胸骨圧迫と人工呼吸は心肺蘇生のために行います。本症例の患者は意識があるため、呼吸はしており、心臓は動いています。従って、心肺蘇生は不要と考えられます。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 283 の正解は 1,3 です。

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