薬剤師国家試験 第110回 問288-289 過去問解説

　問 題　　　　　

65 歳男性。毎年 2 月から 6 月頃にかけて、鼻水、くしゃみ、鼻づまりの症状に悩むため、2 月になり、一般用医薬品購入のため、来局した。初めての来局だったので、聞き取りを行い、以下の情報が得られた。

• 出勤や訪問などの外出時に、くしゃみや鼻水がひどくなるが、その症状に対する薬は飲んだことがない。
• 数年前に市販の花粉症に対する内服薬を購入したことがあるが、品名は忘れた。
• 就寝時布団に入り暖まると、鼻づまりがひどくなり、寝つきが悪くなることが多い。
• 仕事で週に 2 ～ 3 回、社用車を運転して取引先を訪問することがある。
• 泌尿器科クリニックで前立腺肥大症と診断され、治療を受けている。
• 頻尿と残尿感を改善する内服薬を 1 日 1 回夕食後に服用している。ただし、薬剤名は不明である。

問288

この来局者の病態に関する記述として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

1. 鼻閉には、鼻粘膜における血管透過性の亢進が関与している。
2. 免疫複合体が鼻粘膜に沈着して発症した。
3. 鼻汁中の好酸球が減少している。
4. 症状の原因を特定するには、スクラッチテストが有用である。
5. 通年性に、鼻粘膜の腫脹が認められる可能性が高い。

問289

聞き取りの内容を踏まえて、この来局者に提案する一般用医薬品として最も適切なのはどれか。1 つ選べ。

 

 

 

 

 

　解 説　　　　　

問288

選択肢 1 は妥当です。
箇条書き 3 つ目の「・・・暖まると、鼻づまりがひどく」と対応している記述です。

選択肢 2 ですが
免疫複合体が関与するのは「Ⅲ型」アレルギーです。一方、本症例は季節性アレルギー性鼻炎と考えられます。アレルギー性鼻炎は「Ⅰ型」アレルギーです。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
アレルギー性鼻炎において、アレルギー反応の病変部に好酸球は集まります。従って、好酸球は増加しています。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
スクラッチテストとは、皮膚にアレルゲンを付着せた後に針で引っ掻いて反応を見る検査です。

選択肢 5 ですが
「毎年 2 月から 6 月頃にかけて・・・症状に悩む」という記述と矛盾します。選択肢 5 は誤りと考えられます。

以上より、問 288 の正解は 1,4 です。

問289

選択肢 1,2 の違いは 包装における量のみです。
エピナスチンは妥当と考えられます。

選択肢 3 ~ 5 ですが
クロルフェニラミンマレイン酸塩が含まれると、強い眠気の可能性があるため「仕事で週 2 ~ 3 回、社用車を運転」という部分から避けるべきです。選択肢 3 は誤りです。 

また、選択肢 4,5 は「マレイン酸カルビノキサミン」が含まれると強い眠気の可能性がある上、ベラドンナ総アルカロイドが抗コリン薬なので、前立腺肥大治療中であることを考えると避けるべきです。選択肢 4,5 は誤りです。

選択肢 1,2 はどちらも適切と思われますが、1 つ目の箇条書きにあるように「症状に対する薬は飲んだことがない」ので、まずは少量で試してみるのがより適切です。

以上より、問 289 の正解は 1 です。