薬剤師国家試験 第110回 問290-291 過去問解説

 問 題     

65 歳男性。2 型糖尿病の既往があり処方 1 の薬剤を服用している。約 15 年前に C 型肝炎ウイルス (HCV) 感染症と診断され、インターフェロン治療を受けたがウイルスは陰性化しなかった。

その後、C 型慢性肝炎に対して処方 2 の薬剤を内服し経過観察中であったが、AST 及び ALT の軽度上昇が認められたため、直接作用型抗ウイルス薬 (処方 3) が追加された。

問290

この患者に対する服薬指導として、誤っているのはどれか。1 つ選べ。

  1. カナグリフロジンにより、口が渇いたり尿量が増えることがあります。
  2. 抗ウイルス薬を飲み忘れた場合は、翌日の夕食後まで服用しないでください。
  3. 抗ウイルス薬の併用により、低血糖が発現する可能性が高まるため、ふらつきなどの症状に注意してください。
  4. 抗ウイルス薬は、12 週間飲み続ける必要があるので、継続して受診してください。
  5. 抗ウイルス薬により血圧が上昇する可能性がありますので、家庭でも血圧を測定してください。

問291

処方 3 追加時とその 2 ケ月後受診時の検査値は下表のとおりであった。

検査結果を見た医師から、院内における採用薬の確認と治療薬の変更について、薬剤部に問合せがあった。

検査値から判断し、処方 3 の薬剤を変更することにした。変更後の治療薬として、最も適切なのはどれか。1 つ選べ。

  1. ラミブジン
  2. グレカプレビル・ピブレンタスビル配合錠
  3. エンテカビル
  4. テノホビルアラフェナミド
  5. ソホスブビル・ベルパタスビル配合錠+リバビリン

 

 

 

 

 

正解.
問290:2
問291:2

 解 説     

問290

選択肢 1 は正しい記述です。
カナグリフロジンは、◯◯グリフロジンなので SGLT2 (sodium glucose transporter 2)阻害薬です。尿中糖排泄を増やすため、尿浸透圧が上昇し浸透圧利尿によって尿量が増え、脱水傾向になるため口渇が副作用という流れです。


選択肢 2 ですが

抗ウイルス薬飲み忘れについて「次の服薬まで 大体 12 時間以上空いている時点に思い出したのであれば即飲む、次の服薬まで もう 12 時間もない場合、次まで待つ」「決して 2 回分飲むとかやらない」と指導します。「飲み忘れた場合、服用しない」という指導は、選択肢の中で不適切と考えられます。誤っているのは、選択肢 2 です。


選択肢 3 は正しい記述です。

ウイルス感染により障害されていた糖代謝が改善する、インスリン抵抗性が改善することなどによる低血糖が副作用として知られています。


選択肢 4 は正しい記述です。
12 週間の服用で 96 ~ 100% のウイルスが除去されます。意義を伝え、しっかりと飲み続けてもらいます。


選択肢 5 は正しい記述です。

高血圧に気付けるよう、家庭で血圧を測定するように指導します。


以上より、問 290 の正解は 2 です。

問291

検査値から eGFR が 30 未満まで減少していることを読み取ります。


選択肢 1,3,4 ですが
ラミブジン、エンテカビル、テノホビルは B 型肝炎治療薬です。C 型肝炎治療のための薬剤として不適切です。選択肢 1,3,4 は誤りです。


選択肢 2 は妥当です。
NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤である グレカプレビル 水和物と NS5A 阻害剤である ピブレンタスビル を有効成分とする配合錠です。ちなみにですが、P-gp、OATP 1B1 との相互作用が知られています。


選択肢 5 ですが
ソホスブビル・ベルパタスビル配合錠 は、重度の腎機能障害 (eGFR < 30 mL/分/1.73 m2)に禁忌です。検査値を見ると eGFR が 30 を切っているため、不適切です。選択肢 5 は誤りです。


以上より、問 291 の正解は 2 です。

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