問 題
29 歳女性。既婚。3 年前に夫をドナーとした生体腎移植 (ABO 血液型適合) を受け、拒絶反応を抑制するため免疫抑制薬を以下の処方で服用しながら、生活をしている。腎移植後、体調がよくなり生活も安定してきたので、子供を欲しいと思うようになった。

問294
患者の希望を考慮すると、今後の免疫抑制薬として選択可能なのはどれか。2 つ選べ。
- シクロスポリン
- タクロリムス
- バシリキシマブ
- ミゾリビン
- エベロリムス
問295
1 年後、この患者は妊娠したが、妊娠第 25 週目になって血圧の上昇 (154/112 mmHg) がみられたため入院し、降圧療法を行うことになった。なお、入院時の血液検査結果は以下のとおりである。
(検査値)
BUN 18mg/dL、血清クレアチニン 0.7mg/dL、eGFR 80mL/min/1.73m2、Na 143mEq/L、K 5.2mEq/L、Cl 105mEq/L
この患者に対して禁忌ではなく、用いることができる降圧薬はどれか。2 つ選べ。
- アテノロール
- エナラプリルマレイン酸塩
- エサキセレノン
- バルサルタン
- ニフェジピン
問294:1, 2
問295:1, 5
解 説
問294
2016 年度から行われている「妊婦・授乳婦を対象とした薬の適正使用推進事業」の成果に関して問われています。
選択肢 1,2 は妥当です。
シクロスポリン、タクロリムスは共に「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与可能」です。ちなみにですが、アザチオプリンも選択可能です。まとめておさえておくとよいです。
選択肢 3,4,5 ですが
これらは妊婦に対して投与禁忌であるため、選択可能ではありません。選択肢 3,4,5 は誤りです。
以上より、問 294 の正解は 1,2 です。
問295
カルシウム拮抗薬 (ニフェジピン・アムロジピン)、β 遮断薬 (カルベジロール・ビソプロロール) も妊婦に対しての禁忌が解除されました。
また、以前より β 遮断薬について「アテノロール」、「ラベタロール」、「プロプラノロール」、「ソタロール」に関しては禁忌指定ありません。
選択肢 1 は妥当です。
アテノロールは妊婦に対して「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与可能」です。
選択肢 2 ですが
エナラプリルは ACE 阻害薬です。妊婦禁忌です。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
エサキセレノンは選択的ミネラルコルチコイド受容体ブロッカーです。K の排泄を抑制するため 高 K 血症が副作用として表れることがあります。そのため、高 K 血症では使用できません。他には 重度の腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)の患者も禁忌です。本症例では、検査値から 高 K が読み取れるため使用できません。 選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
バルサルタンは AT1 受容体ブロッカーです。妊婦禁忌です。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
ニフェジピンは「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与可能」です。
以上より、問 295 の正解は 1,5 です。
ちなみにですが
2025 年にはドンペリドンの禁忌も「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与」に変更されました。※ただし「つわりにはドンペリドンの適応はない」点に注意が必要です。

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