問 題
25 歳女性。既婚。子供を欲しいと思っている。2 ケ月ほど前から屋外での作業の後、微熱、疲労感、関節痛及び両頬に紅斑が現れたため、市販の感冒薬と解熱鎮痛薬で様子を見ていた。
3 日前から 38 ℃ 台の発熱と下肢の浮腫、冷たいものを持つと両手指のしびれ・蒼白現象などが出現したため、総合病院を受診したところ、精査目的で入院となった。
血液検査結果は以下のとおりであった。
(検査値)
白血球 2,800/μL、赤血球 400×104/μL、血小板 9.3×104/μL、血中総ビリルビン 0.6mg/dL、ALT 26IU/L、AST 15IU/L、BUN 45mg/dL、血清クレアチニン 2.0mg/dL、抗核抗体 640倍、抗Sm抗体 8倍、尿タンパク (2+)
問296
この患者の病態に関する記述として正しいのはどれか。2 つ選べ。
- 関節リウマチの典型的な初期症状が発現している。
- 発症には、主に細胞性免疫 (Ⅳ型アレルギー) が関与する。
- 検査結果より、ループス腎炎は否定できる。
- 手指に Raynaud (レイノー) 現象が認められる。
- 粘膜症状や精神神経系症状など多様な全身症状が現れることがある。
問297
その後、この患者に対して、以下の処方で治療が開始されることになった。

この患者に対する入院中から退院時の服薬指導において、病棟薬剤師が患者に伝える内容として適切なのはどれか。2 つ選べ。
- 重篤な臓器障害が発症した場合は、ステロイドパルス療法として 1 クール 7 日間点滴投与すること。
- ステロイド抵抗性を示した場合は、免疫抑制薬が追加されること。
- 退院後の維持療法では、同用量のプレドニゾロンが用いられること。
- 屋外での作業時には日よけをすること。
- 妊娠は、病状に影響しないこと。
問296:4, 5
問297:2, 4
解 説
問296
検査値に抗核抗体、抗 Sm 抗体といった DNA に関する抗体が見られること、特徴的な両頬の紅斑などから 全身性エリテマトーデス (SLE) が強く疑われる症例です。
全身性エリテマトーデス(SLE)は、全身性、非感染性の慢性炎症性疾患です。Ⅲ型アレルギー機序による臓器障害が生じます。ループス腎炎は、SLE に合併する腎炎です。糸球体に免疫複合体が沈着することなどが原因です。
選択肢 1 ですが
関節リウマチの初期症状は初期症状は朝のこわばりなどです。本症例は「リウマチの典型的初期症状」が発現しているとはいえません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
全身性エリテマトーデスは Ⅲ 型アレルギーに分類されます。「Ⅳ型アレルギー」ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
BUN 高値、血清クレアチニン高値なので腎機能の低下が見られる症例です。SLE であれば合併しうる ループス腎炎 の可能性は、否定できないと考えられます。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
レイノー現象は、寒冷などにより手足の血行不全 → 皮膚の色が蒼白または紫色(チアノーゼ) になり、痛み、冷感、しびれ感を自覚 → 血液の流れが回復すると、逆に充血し赤くなる という現象のことです。
選択肢 5 は妥当です。
全身性エリテマトーデスでは、多様な全身症状が現れることがあります。
以上より、問 296 の正解は 4,5 です。
類題 109-157158
https://yaku-tik.com/yakugaku/109-157/
問297
選択肢 1 ですが
「ステロイドパルス療法」は、1 クール 3 ~ 5 日で行われると考えられます。「1 クール 7 日間」は不適切です。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
シクロホスファミドやミコフェノール酸モフェチルが使用されることが前回 109 回試験でも問われており、思い出しやすかったのではないでしょうか。
選択肢 3 ですが
維持療法では、ステロイドを漸減していきます。「同用量」ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
SLE は、直射日光 (紫外線) の影響を受けやすいです。症状悪化や再燃につながることもあり、日ごろから直射日光を避ける工夫が必要です。
選択肢 5 ですが
妊娠・出産は可能だが、病気が落ち着かない状態での妊娠は流産や早産、SLE 自体の症状悪化もおこしやすいことが知られています。そのため、6 ヶ月間程度病状を安定させてから計画的に行うことが重要です。「妊娠は、病状に影響しない」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 297 の正解は 2,4 です。
類題 109 – 157158
https://yaku-tik.com/yakugaku/109-157/

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