薬剤師国家試験 第110回 問314-315 過去問解説

 問 題     

ICU に常駐する薬剤師が、この病棟で使用している輸血用血液製剤のうちの血液成分の製剤に関する病棟スタッフ向けの講義を実施し、血液製剤に関する内容やその留意点について質問を受けた。

この病院で採用されている血液成分の製剤は、赤血球液-LR「日赤」(注)、照射赤血球液-LR「日赤」(注)、濃厚血小板-LR「日赤」(注)、照射濃厚血小板-LR「日赤」(注)、新鮮凍結血漿-LR「日赤」(注)の5種類であるが、ICU病棟では、リスクマネジメントの観点から赤血球液と濃厚血小板は照射済の製剤を使用することが病棟の内規で決まっている。

(注)

  • 赤血球液-LR「日赤」、照射赤血球液-LR「日赤」:有効成分としてヒト赤血球を含む
  • 濃厚血小板-LR「日赤」、照射濃厚血小板-LR「日赤」:有効成分としてヒト血小板を含む
  • 新鮮凍結血漿-LR「日赤」:有効成分としてヒト血漿を含む

問314

この病棟で使用される血液成分の製剤について、薬剤師が講義で話す内容として適切なのはどれか。2 つ選べ。

  1. 赤血球製剤には血液保存液 (CPD 液) と赤血球保存用の添加液 (MAP 液) が混合されているため、常温保存が可能である。
  2. 血小板製剤は振とうしながら保存する必要がある。
  3. 血漿製剤には血球成分は含まれていないため、使用前の血液型の確認は必要ない。
  4. 照射されている血液製剤とは、輸血による移植片対宿主病 (GVHD) 予防目的で、放射線が照射された製品である。
  5. 新鮮凍結血漿-LR「日赤」は、放射線部で照射後に使用すること。

問315

薬剤師が講義時に受けた質問に対する回答として、誤っているのはどれか。1 つ選べ。

  1. 赤血球製剤の原料となる血液の確保は献血により行われています。
  2. 献血の採血は日本赤十字社が行っています。
  3. 血液製剤は、大きく 2 つに分類すると「輸血用血液製剤」と「血漿分画製剤」になります。
  4. 輸血用血液製剤の国内自給率は 100 % です。
  5. 血液成分の製剤の使用に関する記録は、医療機関において使用日から 30 年の保存義務があります。

 

 

 

 

 

正解.
問314:2, 4
問315:5

 解 説     

問314

選択肢 1 ですが
赤血球製剤は 凍結を避け、また、赤血球の代謝を抑えて損傷 (溶血) を防ぎ長期保存を可能にするため、2 ~ 6 ℃ で保存します。「常温保存が可能」は適切ではありません。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 は妥当です。

血小板製剤は、代謝により生じた炭酸ガスによる pH 変化を抑えるために振とうさせながら保存します。振とうにより、炭酸ガスがバッグ外に放出されやすくなります。


選択肢 3 ですが

前半部分の記述は妥当です。血漿製剤には血球成分は含まれていません。しかし、抗体が含まれるため、血液型の確認は必要です。原則、同じ ABO 型の血液を用います。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 は妥当です。

輸血における GVDH を避けるため、新鮮凍結血漿を除く全ての輸血に際しての血液に対する放射線照射を行います。ちなみに、凍結するとリンパ球が壊れるため、新鮮凍結血漿については不要となっています。


選択肢 5 ですが

「新鮮凍結血漿」なので照射不要です。選択肢 5 は誤りです。


以上より、問 314 の正解は 2,4 です。

問315

選択肢 1 ~ 4 は妥当です。

ちなみにですが
選択肢 4 にあるように「輸血用血液製剤」は国内自給率 100% です。一方「血漿分画製剤 (免疫グロブリン製剤、アルブミン製剤など)」については、一部を輸入に頼っています。


選択肢 5 ですが

医療機関において 使用記録保存義務が「30 年間」ではなく「20 年間」です。選択肢 5 は誤りです。

医療機関において使用記録を 20 年間保存しなければならないのは、特定生物由来製品です。特定生物由来製品とは、輸血用血液や、ヒト血液凝固因子、ヒト免疫グロブリン、ヒト血清アルブミンなどの血液製剤などです。


以上より、問 315 の正解は 5 です。

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