国家公務員総合職(化学・生物・薬学)R4年 問106解説

 問 題     

図は、三つの分類群 A、B、C に分類されている 10 種の生物種について、進化的に中立な、あるゲノム領域の 1,000 塩基対分の塩基配列と、化石の情報を基に作成した系統樹である。この系統樹から読み取ることができる情報に関する記述 ㋐、㋑、㋒ のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ただし、このゲノム領域における塩基置換率は系統間で一定で、 1 塩基につき 1 年当たり 2 × 10-9 個であり、同じ塩基置換が別の系統に独立して起こることはなく、系統樹の枝長は時間に比例しているとする。

㋐ 三つの分類群には側系統群が含まれている。

㋑ 生物種 4 と生物種 5 のうち、生物種 3 に近縁なのは生物種 4 である。

㋒ 生物種 1 と生物種 2 の塩基配列を比べると、 8 個の塩基が異なる。


1.㋐
2.㋐、㋑
3.㋐、㋑、㋒
4.㋑、㋒
5.㋒ 

 

 

 

 

 

正解.1

 解 説     

㋐ は妥当です。
側系統群とは、系統樹における 1 つの枝の中からいくつかの小さい枝を除き、残りをまとめたものです。例えば A 群は 800 万年前に枝分かれしたものから 生物種 2 を除いてまとめているため側系統群です。C は 400 万年前に枝分かれしたものをまとめた単系統群です。B は多系統群と考えられます。

㋑ ですが
生物種 3 と生物種 4,5 は共に 800 万年前に枝分かれしているため、近縁度は同じと考えられます。㋑ は誤りです。


㋒ ですが
生物種 1 と生物種 2 は 400 万年前に枝分かれしています。1 年当たり 1 塩基につき 2 × 10-9 の塩基置換が、それぞれの種に対しておきます。1000 塩基対に注目しているため、1 年当たり1000 塩基につき 2 × 10-9 × 1000 = 2 × 10-6 です。400 万年、つまり 4 × 106 経っているので 2 × 10-6 × 4 × 106 = 8 塩基置換です。

それぞれの生物種において 8 塩基置換が入っているので、比較すれば 8 × 2 = 16 塩基が異なります。「8 塩基」ではありません。㋒ は誤りです。


以上より、正解は 1 です。

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