国家公務員総合職(化学・生物・薬学)R3年 問84解説

 問 題     

近年、高等動物の成体の臓器内にも幹細胞 (体性幹細胞) が存在すると報告されている。幹細胞の性質や応用に関する記述 ㋐ ~ ㋓ のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。

㋐ 胚盤胞の内部細胞塊から樹立された胚性幹細胞を分化させ移植することで、損傷組織を修復できるが、免疫拒絶や倫理的な課題が存在する。

㋑ 造血幹細胞は多量に採取しやすく、同種造血幹細胞移植であれば免疫拒絶を起こさないため、毎年国内で多くの骨髄移植治療が行われている。

㋒ 体性幹細胞は成体内の様々な組織に存在し、一般に胚性幹細胞と同様の増殖能・多分化能を維持していることから、細胞治療に利用されている。

㋓ 体細胞由来の核を、除核した未受精卵に移植する手法で誕生したクローン動物の死亡率が高い理由の一つは、不十分なリプログラミングであると考えられている。


1.㋐、㋑
2.㋐、㋒
3.㋐、㋓
4.㋑、㋒
5.㋒、㋓

 

 

 

 

 

正解.3

 解 説     

㋐ は妥当です。
胚性幹細胞 (ES 細胞) に関する記述です。

㋑ ですが
造血幹細胞移植では、移植片対宿主病(GVHD:Graft Versus Host Disease)が問題になります。GVDH は、ドナーの免疫システムが、レシピエントの全身を異物として攻撃する疾患です。「同種造血幹細胞移植であれば免疫拒絶を起こさない」わけではありません。㋑ は誤りです。

㋒ ですが
体性幹細胞とは、生体内に存在し、限られた複数の細胞に分化できる幹細胞です。胚性幹細胞 (ES 細胞) のような増殖能・多分化能を維持しているわけではありません。㋒ は誤りです。

㋓ は妥当です。
クローン動物の死亡率に関する記述です。


以上より、正解は 3 です。

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