問 題
70 歳男性。糖尿病と心不全で治療中。3 年前に眼圧の上昇が指摘され、原発開放隅角緑内障との診断を受け、処方 1 による治療を開始した。なお、同時に白内障の診断も受けている。
点眼液による治療開始後、目の周囲が黒ずむなど眼瞼色素沈着が観察されるようになったため、処方 1 から処方 2 へ変更になった。その後、眼圧低下が不十分と診断され、現在は処方 2 に加えて処方 3 が追加となっている。
問262
点眼液使用に関して、薬剤師がこの患者に指導する内容として、適切なのはどれか。1 つ選べ。
- 処方 2 と処方 3 の薬剤については、朝の点眼時、時間をおかずに連続して点眼すること。
- 処方 3 の薬剤は懸濁性点眼液なので、朝の点眼時には、処方 3 の薬剤を最初に使用すること。
- 処方 2 の薬剤は水分の排出を促すので、いつもより水分を多めに摂取すること。
- 処方 2 の薬剤は保存剤が含まれているので、毎回よく振って使用すること。
- 処方 3 の薬剤は点眼後、全身作用を起こすことがあるので、過敏性の兆候に注意すること。
問263
しばらくして白内障の手術 (眼内レンズ挿入術) のため入院となり、処方 2 が中止となった。処方 2 に替えて、新たに異なる作用機序の薬物を追加することになった。
追加する薬物の作用機序として、適切なのはどれか。2 つ選べ。
- アドレナリン α2 受容体を刺激して、毛様体における房水産生を抑制するとともに、ぶどう膜強膜流出経路からの房水流出を促進する。
- アドレナリン β1 受容体を遮断して、毛様体における房水産生を抑制する。
- 炭酸脱水素酵素を阻害して、毛様体における房水産生を抑制する。
- Rho キナーゼを阻害して、線維柱帯-シュレム管経路からの房水流出を促進する。
- プロスタノイド EP2 受容体を刺激して、線維柱帯-シュレム管経路及びぶどう膜強膜流出経路からの房水流出を促進する。
正解.
問262:5
問263:1, 4
解 説
問262
オミデネパグ (エイベリス) は、選択的 EP2 受容体作動薬 緑内障・高眼圧症治療剤です。EP2 受容体刺激作用により、線維柱帯流出路及びぶどう膜強膜流出路を介した房水流出が促進され、眼圧低下します。
複数の点眼薬使用時は、一般的に 5 分以上 間を開けて点眼します。また、水溶性点眼薬 → 懸濁性点眼薬 → ゲル化点眼薬 → 油性点眼薬 の順序で点眼します。
選択肢 1 ですが
5 分以上間を開けて点眼するよう指導するのが適切です。「時間をおかずに連続して」ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
処方 2 が 水溶性なので、処方 2 が先です。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
オミデネパグは房水流出を促しますが、特に「いつもより水分を多めに摂取」する必要はありません。心不全もあるので過剰な水分摂取を促しかねない内容でもあり、不適切です。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
使用時、キャップを閉じたままよく振ってからキャップを開けて点眼すること と指導するのは、懸濁性点眼液である処方 3 です。また「保存剤が含まれているから、毎回よく振って」という内容は 不適切です。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
ブリンゾラミドは点眼後、全身的に吸収されるため、スルホンアミド系薬剤の全身投与時と同様の副作用があらわれるおそれがあるので、注意が必要です。
以上より、問 262 の正解は 5 です。
問263
オミデネパグ (エイベリス) は、無水晶体眼又は眼内レンズ挿入眼の患者に禁忌です。黄斑浮腫、及びそれに伴う視力低下及び視力障害を起こすおそれがあります。
選択肢 1 は妥当です。
緑内障治療薬ブリモニジンの作用機序です。
選択肢 2 ですが
チモロールの作用機序です。新たな異なる作用機序ですが、心不全で治療中の患者なので不適切と考えられます。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3,5 ですが
新たな異なる作用機序ではありません。選択肢 3,5 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
リパスジルの作用機序です。
以上より、問 263 の正解は 1,4 です。
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