薬剤師国家試験 第109回 問173 過去問解説

 問 題     

薬物のみかけの分布容積とその変動に関与する血漿タンパク結合に関する記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. みかけの分布容積は、体内薬物量と血漿中薬物濃度の平衡定数として定義される。
  2. 特定の臓器や細胞内小器官 (核やリソソーム、ミトコンドリアなど) に分布する薬物は、体重 1 kgあたりの分布容積が 10 L を越えることがある。
  3. 脂溶性の高い薬物の分布容積は加齢に伴って減少する。
  4. 血漿タンパク結合率が高い薬物のみかけの分布容積は体内水分量とほぼ等しい。
  5. タンパク非結合型薬物の濃度は、定常状態において血漿中と組織間隙液中との間でほぼ等しい。

 

 

 

 

 

正解.2, 5

 解 説     

選択肢 1 ですが
分布容積 Vd = D/C0 (静注時) です。体内薬物量と血漿中薬物濃度の平衡定数ではありません。

分布容積の単位が L であることは基礎知識です。すると、もしも選択肢の記述どおり「…分布容積は..平衡定数」であれば、平衡定数の単位は mol/L の何乗かだろうから、単位があいません。従って誤り、と判断してもよいです。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 は妥当です。
分布容積が 10L/kg を超える 薬物として、アミオダロンなどが知られています。


選択肢 3 ですが
加齢 → 体内かさかさ、水分量減少 です。すると体内が油っぽくなる → 脂溶性薬物は分布しやすくなる → 分布容積「大きくなる」です。「加齢に伴って減少」ではありません。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 ですが
血漿タンパク結合率が高ければ「血中にずっと薬物がいてぐるぐるまわる」→「体内の血液量である 3.5 L 付近が そのまま分布容積」です。つまり、体内「血液量」とほぼ等しいです。体内「水分量」とほぼ等しい、ではありません。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 は妥当です。
定常状態なので、組織内と組織外での薬物濃度が一定になっています。そして、タンパク非結合型なので、組織外における血液とそれ以外 (組織間液) に均等に薬物は分布しています。

従って、血漿中濃度と組織の周辺である組織間隙液中の濃度はほぼ等しいと考えられます。※タンパク結合している薬物は、血漿中から組織間液側には移行しないという設定です。


以上より、正解は 2,5 です。

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