問 題
ペニシリン耐性の黄色ブドウ球菌が発現する β – ラクタマーゼを精製し、反応速度論的解析を行った。β – ラクタマーゼの反応は以下のミカエリス・メンテン式に従うものとする。
異なる濃度のペニシリンを含む 10 mL の反応液中に 1 ng の β -ラクタマーゼを加え、反応生成物の量を測定したところ、ペニシリン濃度 ([S]) と 1 分間に生じる反応生成物の量 (v) の関係は図 1 のようになった。
また、ペニシリン濃度の逆数 (1/[S]) と 1 分間に生じた反応生成物量の逆数 (1/v) をプロットしたところ、図 2 のようになり、回帰直線の式は
であった。
以下の記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。なお、測定中のペニシリン濃度の低下は無視できるものとする。
- β – ラクタマーゼは、酸化還元酵素である。
- 反応液中の β – ラクタマーゼを 2 ng にしても、単位時間あたりの反応生成物量は変わらない。
- この酵素の Vmax の値は 0.067 nmol/mL・min (有効数字 2 桁) である。
- この反応系に競合阻害薬を加えて実験した場合、見かけ上の Km は 5.0 μmol/L より大きくなる。
- この反応系に非競合阻害薬を加えて実験した場合、図 2 の回帰直線の傾きは小さくなる。
解 説
選択肢 1 ですが
β ー ラクタマーゼは、β-ラクタムを加水分解する酵素なので「加水分解酵素」です。「酸化還元酵素」ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
基質濃度を上げれば上げるほど 単位時間あたりの反応生成物量が上がる場合には変わらないのですが、基質濃度が高まり飽和している状態で酵素の量を増やせば、単位時間あたりの反応生成物量は増えると考えられます (下図参照)。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
Vmax は、[S] が十分大きい時の v です。ある程度 [S] が大きくなったら飽和して v は変化しないので、[S] をとてつもなく大きくした場合を考えると、1/[S] ≒ 0 です。従って、回帰直線の式は1/v = 15.0 に近似できます。
1/v = 15 を解くと v = 0.066…なので、有効数字 2 桁、つまり 0 でない数が出てきてから 3 桁目で四捨五入すれば、0.067 を得ます。
選択肢 4 は妥当です。
競合阻害薬を入れるので、図 1 のプロットを滑らかにつないだ曲線が「右方向に平行移動」します。すると、ミカエリス定数 Km、すなわち「Vmax/2 となる [S]」 も右側へ移動するので、見かけ上 Km が大きくなります。
選択肢 5 ですが
非競合阻害薬を加えた場合、図 2 の直線は「x 切片は変化せず、傾きは大きくなり、y 切片も大きく」なります。知識としておさえておきたい内容です。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 115 の正解は 3,4 です。
参考 酵素反応、拮抗阻害、非拮抗阻害
https://yaku-tik.com/yakugaku/bk-4-1-9/
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