薬剤師国家試験 第108回 問226-227 過去問解説

 問 題     

精神神経科の医師から医薬品情報室に、妊婦がリチウム製剤とラモトリギン製剤を服用したときの胎児における心奇形の発生について質問があった。

薬剤師が論文を検索し、各製剤の服用による胎児の心奇形発生に関するコホート研究報告を見つけた。論文には下表に示した結果が掲載されていた。

問226

心奇形発生に及ぼすリチウム製剤の服用の相対危険度はどれか。1 つ選べ。

  1. 0.9
  2. 1.6
  3. 2.4
  4. 3.6
  5. 4.2

問227

論文には、薬剤非服用群に対するリチウム製剤又はラモトリギン製剤服用群の相対危険度(傾向スコア分析により補正した値)を服用量別に示した図が載っていた。

妊娠中の薬剤服用状況と胎児の心奇形発生に関し、下図を基に薬剤師が医師に説明する内容として誤っているのはどれか。1 つ選べ。

  1. リチウム製剤服用量が 1 日 900 mg を超える群では、出生 100 人あたり 6.32 人に心奇形が発生しています。
  2. リチウム製剤服用量が 1 日 900 mg を超える場合、薬剤非服用群に比べ胎児の心奇形は約 4.2 倍発生しやすくなると考えられます。
  3. リチウム製剤服用量の増加に伴い、胎児の心奇形が発生しやすくなる傾向が認められます。
  4. ラモトリギン製剤は、リチウム製剤に比べ胎児の心奇形発生リスクを統計学的に有意に上昇させると考えられます。
  5. ラモトリギン製剤服用群全体では、出生 100 人あたり 2.5 人に心奇形が発生しています。

 

 

 

 

 

正解.
問226:3
問227:4

 解 説     

問226

相対危険度(相対リスク)は「暴露群の発生率 ÷ 非暴露群の発生率」で求めることができます。(衛生薬学まとめ 要因・対照研究(コホート研究)、相対危険度、寄与危険度)。

薬剤非服用群の発生率は、1.5% です。リチウム製剤服用群の発生率は、3.6% です。3.6 ÷ 1.5 = 2.4 となります。

以上より、問 226 の正解は 3 です。

問227

選択肢 1 は妥当です。
図の、リチウム製剤服用群 における > 900mg/日 の行と対応します。

選択肢 2 は妥当です。
薬剤非服用群の 1.50 と、リチウム製剤服用群における > 900mg/日 が 6.32 である点をまとめて「約 4.2 倍」と表現しています。

選択肢 3 は妥当です。
発生数が増加傾向にあることが読み取れます。

選択肢 4 ですが
相対危険度(95 % 信頼区間)が 1.0 をどれもまたいでいることから、統計学的に有意ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
2000 人中 50 人なので、100 人あたりであれば、2.5 人です。

以上より、問 227 の正解は 4 です。

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