薬剤師国家試験 第108回 問169 過去問解説

 問 題     

血漿タンパク質と、血漿タンパク質と薬物の結合に関する記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. 血漿タンパク質と薬物の結合は、通常、共有結合である。
  2. 血漿タンパク質のうち、最も多く存在するのが γ – グロブリンである。
  3. 血漿タンパク質のうち、α1 – 酸性糖タンパク質は多くの酸性薬物と結合する。
  4. 血漿アルブミン濃度は肝硬変で低下し、血漿中の薬物の非結合形の割合が増加する。
  5. 併用薬により血漿タンパク結合の競合阻害を受けた薬物は、単独投与の場合と比較して組織への分布量が増加する。

 

 

 

 

 

正解.4, 5

 解 説     

選択肢 1 ですが
「共有結合している」とすると、タンパク質と薬物は いったん結合すると、まず離れませんよね。おそらく血中のタンパク質と薬物はくっついたり、状況に応じて離れたり というイメージがあるのではないでしょうか。

このイメージについては、タンパク質と薬物の結合について、単分子の吸着に関する Langmuir 式で解析する という基礎知識からも推測できると思われます。すなわち、吸着ではくっついたり離れたりします。このイメージと「共有結合」との間に矛盾を感じるのではないでしょうか。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
これは響きが似ているので、間違いそうだと感じました。血漿タンパク質のうち、最も多く存在するのは「アルブミン」です。(参考 98-42 アルブミンに結合しやすい物質)。γーグロブリンではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
α1 – 酸性糖タンパク質と結合しやすいのは、塩基性薬物です。(参考 血漿タンパク質と薬物の親和性 107-43)。「酸性薬物」ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4,5 は妥当です。

肝臓でアルブミンが合成されるので、肝硬変で肝機能が落ちれば、アルブミン合成減少 → 血漿アルブミン濃度低下という流れです。そして、結合するタンパク質が減るのだから、非結合率が増加します。

組織へ分布するのは、非結合形です。併用薬により血漿タンパク結合の阻害を受ければ、より組織へ分布します。

以上より、正解は 4,5 です。

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