問 題
薬剤師が病院薬剤部内の勉強会で、ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬Aの心保護作用について発表することになり、以下の文献を入手した。
動脈硬化性心疾患を有する、または、動脈硬化性心疾患リスクが高い2型糖尿病患者を対象に、「A投与群」、「A非投与群」の2群に無作為に割り付けし、心血管死または心不全による入院を主要評価項目として検討したところ、以下の結果を得た。
問304
この解析に用いられた統計手法として、適切なのはどれか。1つ選べ。
- t検定
- Mann-WhitneyのU検定
- Kruskal-Wallis検定
- Cox回帰分析
- 重回帰分析
問305
薬剤師が勉強会で説明する内容として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 主要評価項目は、代用エンドポイントを用いています。
- ハザード比の95%信頼区間が1を含んでいないことから、両群間に統計学的に有意差が認められます。
- 相対リスク減少は83%です。
- Aの投与は、2型糖尿病患者において主要評価項目のリスクを減少させるといえます。
- Aの投与は、2型糖尿病患者において心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の心血管イベントの複合項目のリスクを減少させるといえます。
正解.
問304:4
問305:2, 4
解 説
問304
ハザード比が出ていることに注目します。
103-192193 と、少し形式が違うが同じ内容であると思い出せれば理想的だったと思います。Cox 回帰分析が適切です。
以上より、問 304 の正解は 4 です。
統計解析方法は頻出テーマです。
特殊な手法から覚えていくといいのかもしれないです。
・生存分析を カプランマイヤー法で行った
→統計解析は ログランク か 一般化 ウィルコンソン
・多変量解析
→時間的要素がかかわる(例:薬投与後、1年間の心疾患の発生率など)、かつ、イベントがおきる or おきない という 0 or 1 型のデータ解析の場合 であれば、Cox 回帰
→時間的要素なし、データがすべて0 or 1型 であれば、ロジスティック回帰
→量的データであれば、多変量解析
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上記特殊パターンでない
→2つのグループのデータに関する解析の場合は、t 検定などを思い出します。まず、データが0,1型であれば、χ2 検定を用います。
2つのグループのデータに関する解析で、χ2 検定が使えないデータの場合「パラメトリック=正規分布 かどうか」、及び「データ対応のあるなし」によって、用いる手法が変わります。
・パラメトリック
→ t 検定など。(平均の差など で解析に用いる)。データ対応がある場合が paired t 検定。
・ノンパラメトリック
→ マンホイットニー U 検定。データ対応がある場合が ウィルコンソン の符号順位検定。
どれにもあてはまらない時は消去法というのが、本試験時点における個人的なおすすめの考え方です。参考になれば幸いです!
問305
選択肢 1 ですが
心保護作用について知ることが目的で、心血管死または心不全による入院を主要評価項目としているため、真のエンドポイントを用いていると考えられます。(類題 103-192193)。これがもしも主要評価項目が、何らかの検査値に推移であったり、レントゲンによってわかる外見的変化であったりすれば、代用エンドポイントといえます。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
選択肢 3 ですが
相対リスク減少=1-相対リスクです。ハザード比がまさに相対リスクなので 1- 0.83 = 0.17 です。百分率で表せば 17% です。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4,5 ですが
選択肢 4 は妥当です。一方、複合項目については、本問文献からは読み取れません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問305 の正解は 2,4 です。
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