問 題
72歳男性。経口血糖降下薬を用いた治療を受けていたが、健康診断にて腎機能は正常であるが肝機能の異常を指摘され、精査目的で入院となった。
病棟担当薬剤師が入院時持参薬の鑑別結果をもとに初回面談の際に指導を行う予定である。
問278
主治医からの情報で、本患者には肝腫瘍の疑いがあるため、明後日朝にイオパミドール注射液を用いた画像検査が予約されていることが判明した。病棟担当薬剤師が患者に対して行う説明の内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 本画像検査に際しメトホルミンの服用は検査前日から休止する。
- グリセリン浣腸を本画像検査前夜に行う。
- 本剤の主成分はX線吸収能が高いため、腫瘍を明瞭に描出できる。
- 造影剤を使用しても腎機能については特に注意する必要はない。
- 十分な水分補給は画像検査後の強い痒みが出る場合に行う。
問279
イオパミドール注射液には以下の3種類のバイアル製剤がある。これら注射剤の粘度に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
ただし、37℃における水の粘度0.70mPa・sとする。
- 製剤Aの動粘度は、製剤Bの動粘度より小さい。
- 製剤Bの相対粘度は、製剤Cの相対粘度より小さい。
- 製剤Cの比粘度は、製剤Bの比粘度より小さい。
- いずれの製剤も、イオン性造影剤に比べて高粘度のため、組織障害性が低減されている。
- 製剤Cの還元粘度は、製剤Bの還元粘度より小さい。
正解.
問278:1, 3
問279:1, 2
解 説
問278
選択肢 1 は妥当です。
ヨード造影剤を用いて検査を行う患者について、メトホルミンの併用で乳酸アシドーシスを起こすことがあるので、メトホルミン投与を一時中止します。(97-204)。
選択肢 2 ですが
大腸検査に関する記述です。肝臓画像検査に関する記述ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
選択肢 4 ですが
イオパミドールは、主に腎排泄される薬です。よって、腎機能を急激に悪化させる危険性があり(99-185)、「特に注意する必要はない」とはいえません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
ヨード造影剤の投与により腎機能の低下があらわれるおそれがあるので、適切な水分補給を行います。強い痒みが出る場合にのみ行うわけではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 278 の正解は 1,3 です。
問279
選択肢 1 は妥当です。
動粘度は、粘度を流体の密度(ρ)で割ることによって得られる値です。 A の動粘度は 1.5 ÷ 1171、B の動粘度は 4.4 ÷ 1328 なので、A の方が小さいです。
選択肢 2 は妥当です。
相対粘度は、溶液の粘度を、溶媒の粘度で割った値です。全て水溶液なので、溶媒は水であり、一定の値です。従って、相対粘度の大小は、粘度を単純に比較すればよいです。B の粘度が 4.4 、C の粘度が 9.1 なので、B の方が小さいです。
選択肢 3 ですが
比粘度とは、相対粘度ー1 で与えられる、溶質分子の分子量と関連づけられる値です。比粘度の大小は、相対粘度の大小と一致します。そして、相対粘度の大小は、粘度を単純に比較すればよいです。C の比粘度の方が「大きい」です。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
粘度と組織障害性の関連性について「高粘度であるから 組織障害性が低減されている」とはいえず、選択肢 4 は妥当ではないと考えられます。
選択肢 5 ですが
還元粘度は、比粘度を 溶質の濃度で割った値です。C の比粘度が (9.1 ÷ 0.70) ー1です。溶質の濃度は表から 755.2 です。一方、B の比粘度は(4.4 ÷ 0.70)ー1です。溶質の濃度は 612.4 です。C の方が「大きい」です。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1,2 です。
コメント