問 題
45 歳男性。体重 45 kg。10 年前に全結腸型潰瘍性大腸炎と診断され、寛解・再燃を繰り返した後、メサラジン 1,500 mg/日、アザチオプリン 50 mg/日で寛解維持されていた。
2 ヶ月前より大腸炎が再燃し、上の処方で効果不十分であったため、以下の処方にて寛解導入することになった。
問254
薬剤師のこの患者への説明として、適切なのはどれか。2 つ選べ。
- 処方 1 の薬剤は血中濃度を測定しながら服用カプセル数を調節します。
- 処方 1 の薬剤は腎障害が起こりやすいので、尿量の減少などがあれば薬剤師に相談してください。
- 処方 1 の薬剤は低血糖になりやすいので、異常な空腹感や冷や汗、動悸があるときはすぐに糖分を摂取してください。
- 処方 2 の薬剤は今回のみの使用で終了します。
- 処方 2 の薬剤の使用直後に、まれにふらつきや息苦しさを感じることがありますが、しばらく安静にすると自然に治まります。
問255
処方 1 及び 2 のいずれかの薬物に期待される効果の機序はどれか。2つ選べ。
- TNF-α に結合して、TNF-α とその受容体の結合を阻害する。
- ヤヌスキナーゼ(JAK) を阻害して、サイトカイン受容体を介した細胞内情報伝達を抑制する。
- ロイコトリエンの産生を阻害して、白血球の組織への浸潤を抑制する。
- プリン塩基の合成を阻害して、リンパ球の増殖を抑制する。
- カルシニューリンを阻害して、T細胞における IL-2 などのサイトカイン産生を抑制する。
正解.
問254:1, 2
問255:1, 5
解 説
問254
処方1 タクロリムスについてですが
免疫抑制剤の1種で、TDM 対象薬です。代表的な副作用として、腎障害が知られています。
選択肢 1 ~ 3 について
選択肢 1,2 は妥当です。
選択肢 3 ですが
低血糖になりやすい、ということはありません。むしろ、免疫抑制剤であるシクロスポリンやタクロリムスは、副作用として高血糖が知られています。(100-216)。選択肢 3 は誤りです。
処方2 アダリムマブについてですが
アダリムマブ(ヒュミラ)は、ヒト型抗ヒト TNF-α モノクローナル抗体です。本試験時点において、用法・用量は、2週に1回投与です。
選択肢 4 ですが
今回のみで終了ではない、と考えられます。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
まれにみられるふらつきや息苦しさは、アナフィラキシーの可能性があり、「しばらく安静にすると自然に治まります」ではなく、「もしもそういった症状を感じたら、直ちに投与を中止し、速やかに主治医に連絡するように」と説明すべきです。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 254 の正解は 1,2 です。
問255
タクロリムスは、カルシニューリンを阻害し、インターロイキンなどのサイトカイン産生を抑制します。従って、対応する効果の機序は「カルシニューリンを阻害して、T細胞における IL-2 などのサイトカイン産生を抑制する」です。
アダリムマブ(ヒュミラ)は、ヒト型抗ヒト TNF-α モノクローナル抗体です。従って、対応する効果の機序は「TNF – α に結合して、TNF – α とその受容体の結合を阻害する」です。
以上より、問 255 の正解は 1,5 です。
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