問 題
35歳女性。喫煙歴15年(1日20本)。以前から、ニコチンガムやニコチンパッチによる禁煙を試みたが失敗を繰り返していた。今回、禁煙外来を受診し、ニコチン受容体の部分刺激薬であるバレニクリン酒石酸塩錠による禁煙を試みることになった。
女性は、医療機関でニコチン置換療法とは異なる治療法であると説明を受け禁煙に意欲的だが、また失敗するのではないかと不安にもなっている。
問210
薬剤師は患者の不安を和らげるため、今回の禁煙療法の特徴について説明した。説明内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- ニコチン置換療法と異なり、治療開始時は薬を服用しながら喫煙が可能です。
- ニコチンを補充しないので、治療中に抑うつ気分や不安、イライラが強く出ることがありますが、一時的なものですので、そのまま服用を続けてください。
- お薬にはニコチンが含まれていませんが、禁煙による離脱症状やタバコに対する切望感が軽減します。
- 途中で禁煙がつらくなったときは、ニコチンパッチ剤との併用療法に切り替えることができます。
- ニコチンガムと同じように、主に口腔粘膜から有効成分が吸収されるので、炭酸飲料やコーヒーでの服用は避けてください。
問211
禁煙療法に用いられた薬物の構造から、ニコチン性アセチルコリン受容体との相互作用に関わる化学的性質として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- バレニクリンの共役酸の pKa は4付近である。
- 共に生体内でカチオン性を示す窒素原子をもつ。
- バレニクリンには鏡像異性体が存在する。
- ニコチンの不斉炭素は R 配置である。
- ニコチンの sp2 混成窒素は水素結合受容体として働く。
正解.
問210:1, 3
問211:2, 5
解 説
問210
バレニクリン(®チャンピックス)は、ニコチン性アセチルコリン受容体の部分刺激薬であり、ニコチン依存症の喫煙者の禁煙による退薬症候を軽減します。(100-247 選択肢 4)。
選択肢 1 は妥当です。
患者が禁煙を開始する日を設定し、その日から 1 週間前に本剤の投与を始める という用法に関する注意書きが添付文書にあります。
選択肢 2 ですが
治療中に抑うつ気分や不安、イライラが強く出る場合、治療中止です。速やかに服用をやめ、医師等に連絡するよう説明します。
選択肢 3 は妥当です。
バレニクリンについての記述です。
選択肢 4 ですが
本試験時点において、バレニクリンとパッチ剤の併用療法について、意義が認められていないと考えてられます。そのため、本選択肢の内容は説明として、不適切と考えられます。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
バレニクリンは錠剤です。ガムと同じように、口腔粘膜から有効成分が吸収されるわけではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 210 の正解は 1,3 です。
ーーー完全に余談
本試験時点で、バレニクリン(チャンピックス)は、出荷停止が続いています。禁煙外来などから、再開が望まれている状況であるようです。
ーーー余談 終わり
問211
選択肢 1 ですが
共役酸なので、H がつきます。構造から、おそらく 左端の N に H がつき、共役酸はアミンと考えられます。
pKa の具体例として、酢酸の pKa が 4.7 です。(104-91 など、酢酸の pKa は過去問に何度か出ており、4付近ということはなんとなく意識されていてもいいかと思われます)。そのため、アミンの pKa はもっと大きいと判断できるのではないでしょうか。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
ニコチン受容体はイオンチャネル型受容体です。そのため、アゴニストとして働く2つの薬物にはカチオン性を示す原子があると推測できるのではないでしょうか。
選択肢 3 ですが
対称面があるため、鏡像異性体は存在しないと考えられます。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
下図のように、ニコチンの不斉炭素の絶対配置は S です。R ではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
(選択肢 1,3,4 を消して選ぶのが 現実的かもしれません。)
以上より、問 211 の正解は 2,5 です。
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