薬剤師国家試験 第106回 問151 過去問解説

 問 題     

細胞膜受容体に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. グリシン受容体は、7回膜貫通型で、受容体の刺激によりアデニル酸シクラーゼを抑制する。
  2. ATP P2X 受容体は、イオンチャネル内蔵型で、ATPが結合すると細胞内に Naと Ca2が流入する。
  3. ニコチン性アセチルコリン受容体は、Gタンパク質共役型で、アセチルコリンが結合すると、イノシトール代謝回転が促進される。
  4. 上皮増殖因子 (EGF) 受容体は、1回膜貫通型で、活性化されるとチロシン残基の自己リン酸化が起こる。
  5. アンジオテンシンⅡAT1 受容体は、イオンチャネル内蔵型で、アンジオテンシンが結合すると細胞内に Clが流入する。

 

 

 

 

 

正解.2, 4

 解 説     

選択肢 1 ですが
グリシン受容体は Clチャネル です。受容体刺激によりアデニル酸シクラーゼ(AC) を抑制するわけではありません。ちなみに、グリシン受容体は、2 個の α サブユニット、3 個の β サブユニットから成る 5 量体構造です。それぞれのサブユニットは、4回膜貫通型です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当な記述です。
ATP 受容体は大きく P2X、P2Y に分類されます。P2X 受容体は、ATP を基質とする細胞表面受容体です。リガンド依存性非選択的陽イオンチャネルです。Na、Ca2+ などを通過させます。P2X はイオンチャネル内蔵型、P2Y は G タンパク質共役型です。

選択肢 3 ですが
N 受容体はイオンチャネルです。G タンパク質共役型ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
EGF が EGFR に結合すると、まず自分のチロシン残基を自己リン酸化します。続いて、低分子量 G タンパク質である Ras の活性化 → セリン/スレオニンキナーゼ の一つである MAPK を活性化することで、核内へのシグナル伝達を行います。この結果、細胞の増殖や分化が引き起こされます。(生化学 まとめ 細胞膜受容体タンパク質などのリン酸化を介した情報伝達経路)。

選択肢 5 ですが
AT1 受容体は Gq タンパク質共役型です。イオンチャネル内蔵型ではありません。(生化学まとめ 主な生理活性ペプチド(アンギオテンシン、ブラジキニンなど)の役割)。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2,4 です。

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