薬剤師国家試験 第106回 問104 過去問解説

 問 題     

次の反応と生成物に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. イミダゾールは、ピリジンより弱い塩基である。
  2. 破線で囲んだ部分構造aよりも部分構造bの方が、脱離して生じるアニオンの共役酸のpKaが小さい。
  3. CH3NH2は、塩基として働いている。
  4. シアノ基は、電子供与性基である。
  5. 破線で囲んだ部分構造cは、グアニジンよりも高い塩基性をもつ。

 

 

 

 

 

正解.2

 解 説     

(1)について、イミダゾールとピリジンはどちらも塩基ですが、イミダゾールは水素を受け取ったあとの共役塩基が共鳴構造により安定であるため、イミダゾールのほうが強い塩基です。よって、(1)は誤りです。

(2)で、部分構造aが脱離してできたアニオン(R-NH)の共役酸は、アミン(R-NH2)です。これは共役酸ではあるものの、アミンは一般的には酸性というより塩基性を持つので、この共役酸はかなり弱い酸だといえます。酸性度が低いということは、pKaは大きくなります。

一方、部分構造bが脱離してできたアニオン(CH3S)の共役酸は、メタンチオール(CH3SH)です。チオールはアルコールよりも酸性度が高いので、もちろんアミンより強い酸だといえます。よって、pKaは小さめです。

以上から、(2)は正しい文章だと判断できます。

(3)で、CH3NH2は基質の炭素(C)に求核攻撃しています。よって、これは「塩基」ではなく「求核剤」として働いています。δ+の炭素(C)にアタックするのが求核性、プロトン(H)を引き抜くのが塩基性だと考えてください。よって、(3)は誤りです。

(4)で、シアノ基は下図のような共鳴構造が描けるため、炭素(C)はδ+に偏っています。よって、これは「電子供与性基」ではなく「電子求引性基」なので、(4)も誤りです。

(5)で、グアニジンはその共役酸が下図のような安定した共鳴構造を複数持つので、グアニジンは高い塩基性を示します。

一方、部分構造cはグアニジンの水素の1つがシアノ基になっています。(4)の解説の通りシアノ基は電子求引性基なので、上図のように正電荷を受け取るような共鳴構造は描けません。

よって、部分構造cの共役酸はグアニジンの共役酸よりも不安定なので、部分構造cのほうが塩基性が低いです。つまり、(5)も誤りです。

以上から、正解は 2 となります。

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