薬剤師国家試験 第105回 問300-301 過去問解説

 問 題     

75歳女性。153cm、48kg。心疾患の治療中に骨密度の低下を認め、以下の処方薬を継続して服用している。家の中で転倒後、腰痛が持続するため、かかりつけ医を受診し、整形外科病院に紹介入院となった。

MRI検査の結果、腰椎圧迫骨折と診断され、1ヶ月間の入院加療と安静が指示された。患者は60歳頃から趣味で編み物をしている。喫煙歴はなく、時折、グラスに2~3杯のワインを飲むことを楽しみにしている。

問300

この患者の病態と治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. ジゴキシンの副作用による続発性の骨粗しょう症と推測される。
  2. 骨吸収マーカーにより骨折のリスクが予測できる。
  3. 長期入院による認知症の発症予防が必要である。
  4. エルデカルシトールはアレンドロン酸ナトリウムの副作用防止のために処方されている。
  5. アレンドロン酸ナトリウムは骨吸収を抑制して骨密度を高め、骨折リスクを低下させる。

問301

患者の退院時に薬剤師が行う指導として適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. アレンドロン酸ナトリウム錠を服用後、30分間は飲食を控えることを伝える。
  2. さらなる骨折はQOLを低下させるため、退院後は軽度な運動も控えることを伝える。
  3. カルシウム製剤が処方されているので、乳製品は控えることを伝える。
  4. アルコール飲料の過度の摂取は骨粗しょう症のリスク因子であることを伝える。
  5. アレンドロン酸ナトリウム錠は水なしで服用することを伝える。

 

 

 

 

 

正解.
問300:3, 5
問301:1, 4

 解 説     

問300

選択肢 1 ですが
ジゴキシンの副作用に骨粗しょう症は知られていません。加齢によるものと推測されます。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
骨吸収マーカーとは、TRACP-5b(破骨細胞内酵素)、NTX(Ⅰ型コラーゲン分解産物)、DPD(Ⅰ型コラーゲンの分子間架橋物質)のことです。破骨細胞による骨組織の吸収・破壊の状態を反映し、骨吸収抑制薬の治療効果判定に適します。「骨折リスク予測」ではありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当な記述です。

選択肢 4 ですが
エルデカルシトールは、活性型ビタミン D3 製剤です。アレンドロン酸ナトリウムはビスホスホネート薬です。共に骨粗しょう症治療薬です。併用していたものであり「副作用防止」ではないと考えられます。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当な記述です。 

問301

選択肢 1,5 ですが
アレンドロン酸(フォサマック、ボナロン)は、ビスホスホネート製剤です。破骨細胞の活性を抑制することにより骨吸収を抑制します。使用上の注意として、食道などに付着したままだと局所刺激症状をおこすおそれがある点があります。そのため、コップ1杯程度の、多めの水での服用を指導します。又、服用後、最低30分は、横にならないようにさらに、食事等を行わないように指導します。(これらは、食道などへの薬の残留を防ぐためです。又、胃に何か入っていると、吸収が悪くなるためです。)よって、選択肢 1 は妥当です。選択肢 5 は誤りです。(99-215)

選択肢 2 ですが
軽度な運動、適度な日光浴は骨密度上昇を促します。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
カルシウム製剤は処方されていません。エルデカルシトールは、ビタミン D 製剤です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当な記述です。
アルコールの過剰摂取→利尿促進による Ca 排出、胃腸での Ca 吸収阻害 などの理由によりリスク因子とされています。

以上より、正解は 1,4 です。

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