問 題
36歳女性。腎移植目的で入院となった。移植に伴いサンディミュン®カプセル、ミコフェノール酸モフェチルカプセル、メチルプレドニゾロン錠を術前より内服することとなり、担当薬剤師が指導を開始した。
移植手術は無事に終了し医師の指示によりサンディミュン®カプセルをネオーラル®カプセルに切り替えることになり、引き続き担当薬剤師が指導を継続することになった。
注:サンディミュン®カプセル:シクロスポリンの油性製剤
ネオーラル®カプセル:シクロスポリンの自己乳化型マイクロエマルション製剤
問278
薬剤師がこの患者に行う術前、術後の服薬指導として、適切でないのはどれか。2つ選べ。
- これらの薬を飲んでいる間は、こまめに手洗いをしてください。
- 抵抗力が下がり、感染症にかかりやすくなるので、麻疹や風疹などのワクチン接種をしておきましょう。
- シクロスポリンは血液中の薬の濃度を測りながら服用する量を決めますので、血液検査が多くなります。
- グレープフルーツジュースはシクロスポリンの効果を弱めてしまいますので、飲まないでください。
- 薬を切り替える時には副作用がでることがありますので、気になることがあれば言ってください。
問279
術前に服用していたシクロスポリンの油性製剤と術後に処方された自己乳化型マイクロエマルション製剤の特徴に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 自己乳化型マイクロエマルション製剤の方が、バイオアベイラビリティが高い。
- いずれも消化管液中でw/o型エマルションが形成される。
- 自己乳化型マイクロエマルション製剤の方が、薬の吸収に対する食事の影響が小さい。
- 自己乳化型マイクロエマルション製剤の方が、油相と水相の間の界面張力が大きいため、液滴が微細化される。
- シクロスポリンは水溶性が高いため、主にエマルションの水相に分配する。
正解.
問278:2, 4
問279:1, 3
解 説
問278
選択肢 1 は、正しい記述です。
選択肢 2 の冒頭にもあるように、移植臓器の拒絶を防ぐために免疫抑制剤を投与しているため、容易に感染症にかかります。従って、こまめな手洗いが推奨されます。
選択肢 2 ですが
免疫抑制剤使用中に生ワクチンの接種は重大な副作用の危険が増すため避けるべきものが多いです。麻しん・風しん混合ワクチン(MR)は生ワクチンです。麻しんや風しんのワクチンは避けるべきです。(接種するのであれば、移植前にすべきです。)よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は、正しい記述です。
TDM 対象薬の一つです。
選択肢 4 ですが
グレープフルーツジュース(GFJ)は、CYP阻害なので、代謝が抑制されることで血中濃度は上昇します。つまり、効果は強くなります。弱めてしまうわけではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい記述です。
以上より、正解は 2,4 です。
問279
シクロスポリンが脂溶性が高く胆汁酸や食事の影響を大きく受けることから、o/w のエマルジョンを形成し、水溶性を高め消化管上部における安定した吸収を実現したのがネオーラルカプセルです。バイオアベイラビリティが高く食事等の影響を受けにくい という特徴があります。
以上より、正解は 1,3 です。
類題 100-270271
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