問 題
69歳男性。7年前から高血圧と糖尿病のため、エナラプリルマレイン酸塩、メトホルミン塩酸塩及びグリメピリドを服用している。
これまで特に問題なく過ごしていたが、最近、動悸を感じるようになり病院を受診した。心電図から心房細動と診断され、以下の薬剤が追加処方された。
なお、患者の身体所見及び検査値などは次のとおり。身長 176cm、体重 72kg、血圧 148/93mmHg、体温 37.0℃、心拍数 161回/min(不規則)、呼吸数 15回/min、BUN 21mg/dL、Scr 1.7mg/dL、Ccr 42mL/min、AST 14U/L、ALT 16U/L
問276
この患者の薬物治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 処方1の主目的は、血圧を十分に低下させることである。
- 脈拍が不規則なので、プロプラノロール塩酸塩の処方を提案する必要がある。
- 処方2の代替薬の1つにリバーロキサバンがある。
- 処方2は心原性脳梗塞の予防目的で処方されている。
- PT-INR値が2.0~3.0になっているか、モニタリングが必要である。
問277
薬剤師は、処方2について減量を考慮すべきと判断した。その理由として適切なのはどれか。2つ選べ。
- ベラパミル塩酸塩との併用により、P-糖タンパク質が阻害され、消化管吸収が増大するため。
- メトホルミン塩酸塩との併用により、尿細管分泌が抑制され、血中からの消失が遅延するため。
- 腎排泄能力の低下により、血中からの消失が遅延するため。
- グリメピリドとの併用により、CYP2C9による代謝が低下し、血中からの消失が遅延するため。
- 肝代謝能力の低下により、血中からの消失が遅延するため。
正解.
問276:3, 4
問277:1, 3
解 説
問276
エナラプリルは、ACE 阻害剤です。降圧薬です。メトホルミンとグリメピリドはそれぞれ、ビグアニド系、SU薬で血糖降下薬です。ベラパミルは Ca 拮抗薬です。クラスⅣ 抗不整脈薬です。ダビガトラン(プラザキサ)は、腎排泄型の直接トロンビン阻害薬です。虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制のために用いる薬です。
患者は 少し大きめのおじいさんで、血圧、体温少し高め、心拍数が不規則で速い呼吸数、肝機能は正常値範囲内、腎機能について BUN基準値ギリギリ、Scr、少し高め、Ccr、低い→腎機能の低下が見られる という状況です。
選択肢 1 ですが
処方 1 の主目的は、不整脈改善です。血圧降下ではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
不整脈でベラパミルが処方されています。プロプラノロールの処方提案の必要はないと考えられます。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3,4 は、正しい記述です。
選択肢 5 ですが
PT-INR 値のチェックが必要なのは、ワーファリンです。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、問276 の正解は 3,4 です。
問277
検査値から腎機能の低下が見られるため、処方 2 について減量を考慮すべきです。
またダビガトランは、P-gp阻害薬との併用により吸収が増大することで効果が増強されることが知られています。
ダビガトランはプロドラックで、吸収されてから代謝活性化を受けて薬効を示します。そして、プロドラック体はP-gpによってある程度は排出されます。ところがこの排出体であるP-gpが阻害されていると排出されることなくプロドラックがどんどん吸収されます。→どんどん代謝活性化を受けます。→薬効が増加する という流れです。
以上より、問277 の正解は 1,3 です。
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